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「向原さん?」
「え? あ、ごめん。なに?」
わざわざ聞きなおすことでもないような気はするが、なんでもないと言うのも違う気がしたから、俺はもう一度同じ質問をすることにした。
「これ、ごま油使ってる?」
「うん、そうなの。オイルおにぎり」
そんなものがあるのかと、俺はひとこと感嘆の言葉を返して、残ったごまおにぎりを食べた。
食べながら横目で向原さんの様子をうかがったが、やはり俺のことを見ているようだった。
そんな向原さんにはふれずに、次はおかずに手をつけることにした。
唐揚げと卵焼きが三つずつ、半分に切られたミニトマトが二つとポテトサラダ。定番メニューではあるが、どれもとてもうまそうだった。
「……うん、うまいうまい」
ひと口ごとに感想を言うのはやめて、とにかく食べまくることにした。
食べることは好きだが、上手に食リポなんてできない。どんどん箸を進めることこそが、何よりもわかりやすく「おいしい」を伝えられるはずだ。
「ごちそうさま」
その後はほとんど会話をすることなく、俺は一心不乱に向原さんが作ってくれた弁当を食べ続けた。
完食した弁当箱のふたを閉じてあいさつをする。
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