熱気 2

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「分かったみたいだな」 急に胸がどきどきしてきたオレに気づいたのか、和哉はそう言うとあからさまにため息をつく。 「晴れて恋人おめでとう。オレは盛大な失恋だ」 その言葉にオレはどきっとする。 そう言えばさっき和哉・・・。 「ごめんっ。かず、オレ・・・」 和哉は一番の親友だけど、そういうことをしたいとは思えない。 和哉の告白をスルーしてしまった焦りと、受け入れられない申し訳なさになんとも言えない顔をしたオレに、和哉は手を伸ばしてオレの頭を撫でた。 最近はもうしなくなったけど、小さい時はよくこうやって頭を撫でてくれたっけ。 「あんなにちびで泣き虫だったのにな」 実は学年は同じでも歳は一歳近く違うオレと和哉は、小さい頃はかなりの体格差があった。今ではほとんど同じくらいの身長だけど、ずっと剣道をしている和哉は見た目は細いけど筋肉はしっかりついている。 「かず・・・」 「こんなにデカくなって女にモテまくるようになったのに、そんなお前を組み敷くなんて、そいつ一体どんな男なんだよ」 確かに昔からは想像できないくらい背は高くなった。それにモテまくるまではいかなくても、それなりに女子から人気はあるけど、男にモテたことは無い。百歩譲ってオレに抱かれたいは分かるけど・・・。 なんでオレなんだろう・・・? 「まあ、確かに背は高いけど身体は細いし、顔も綺麗系だから分からなくもないけど、どっちかっていうとホストっぽくて男ウケしなさそうだよな?もしかしてそいつ、よっぽど男臭いやつなのか?」 ホストってなんだよ。 でも確かにオレのところには友だちとして男は寄って来るものの、そういう意味で言い寄られたことはない。 それに一成は全く男臭くなく、むしろ男を感じさせない雰囲気だ。 「いや、どちらかと言うと女性よりの中性的な感じだな。背もオレより低いし透明感のある爽やかな美少年?男にも人気ある」 性格も大人しくて読書が趣味で、かと言ってスポーツも無難にこなすし、成績も学年二位(一位はオレ)。 「話だけ聞いてると、すごくモテそうなやつだな」 「モテるよ。他校からもよく告られてる」 オレもそこそこモテるけど、一成はもっとモテる。 「そんなモテるやつが、なんでお前?」 「それはオレも疑問・・・て、お前だってさっきオレに告っただろ?」 そうだよ。 お前だって・・・。 「ああ、あれは嘘だよ」 嘘? さっきの押し倒しからの告白が、嘘? 「お前が恋人とセフレの違いだの、好きの気持ちが分からないだの言うから荒療治」 「荒療治・・・てお前、そんなことでオレを押し倒して耳舐めたのかよっ」 キスを避けたら耳舐められて・・・て、避けなかったらキスしたってことか? 「しかも変なとこ触りやがって・・・」 あの時は本当にやられるかと思った。 「ああ、あれは好きでもない相手でもその気になるのかと思っただけで、お前見事に勃たなかったな」 「勃つどころか気持ち悪かったわっ」 一成に触られると熱くなってぞくぞくするけど、和哉にはそんなことにはならなかった。 「良かったじゃん。誰にでも反応する訳じゃないって分かってさ」 そう言って笑う和哉に、確かにそうだと思う。 オレは一成しか知らなくて、一成にがんがん迫られるから身体が快楽に弱くなってしまったんじゃないかと思ったけど、そうじゃなかった。 一成だから熱くなるんだ。 「悪かったよ。勝手に触ってさ。オレも柚相手に勃ったらどうしようかと思ったけど、オレの方も無反応だったわ」 そう言って自分の下肢を指さす和哉に、オレはつられてそこを見てしまった。 小さい時からの仲なので、風呂も一緒に入ったことがあるオレは当然和哉のそれも見たことはある。けれどMAXの時は無い・・・。 ・・・・・・・・・。 思わず想像してしまったオレはすぐに視線を逸らした。
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