熱気 2

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夏休みに入る直前、オレに恋人ができた。 けれどそれは想定外の連続で、果たしてそれを恋人と呼んでいいものなのか、オレにはまだよく分かっていない。 普通なら誰かを好きになり、思いが高まって告白して、そして受け入れてもらって晴れて恋人同士になるのだろう。 だけどオレの場合・・・。 オレたちが付き合ったきっかけは『暑さ』だ。 朝から続く猛暑にオレもあいつ・・・一成も頭がおかしくなった結果、なし崩しにキスして、押し倒されて、そして・・・。 全てが終わって初めて告白されて、それを受けてオレも好き・・・と付き合い始めた相手のことを、恋人と呼んでいいものなのかと、一成が帰ってからふと冷静になって考えてしまった。そしてその疑問が解決しないまま次の日学校で会い、オレとの関係が進展したことにテンションが上がった本人にはその事は言えず、またいつものように一緒に帰ってことに及んでしまった。 いつもなら二人でゲームをする時間は睦み合いに変わり、ベッドの上で過ごすようになった。 でもいつも、一成が帰った後に思ってしまう。 これでいいのか? だけどいつも答えが出ない。 出ないのに、気持ちを隠さない一成の無邪気でひたむきな姿にそれを拒むことが出来ず、いつもなし崩しに一成を受け入れてしまう。 そしてそのまま夏休みに入り、答えを出すどころか考える間もなく毎日のように一成はうちに来て、そしてオレを求め続けた。 そうなるとオレの身体は一成の思いと体温に溺れ、考えることを放棄してしまう。 それはまるで夢の中のよう。 夏休みといういつもと違う日常が、現実感を薄れさせ、まるで別の世界にいるような感覚に陥ってしまう。 だけど夢は必ず覚める。 夏休みが終わりいつもの日常が戻ると、オレの頭の中にはまた疑問が浮かぶ。 オレと一成は恋人同士・・・? ここまでしといて何を言う。と自分でも思う。この夏は、本当に馬鹿みたいに一成としていたのだから。 高校生の凄まじい性欲の上、一成の並々ならぬ探究心は留まるところを知らず、毎日毎日飽きもせずオレの身体で色々試していた。 お陰ですっかり、一成はオレ以上にオレの身体を知っている。 どこがいい所でどうしたら身体が喜ぶのかを、夏休み中ずっと研究し続けた一成は容易にオレを快楽の中に溺れさす。そのためオレの身体は、部屋に一成がいるだけで熱くなってしまう。 だけどやっぱり思う。 これって本当に恋人同士なのか? 世の中にはセフレという関係もある。 オレの身体は一成を受け入れ、見ただけで歓喜する。だけど心はどうなんだろう? 身体だけなら、セフレと変わらないのでは・・・? 「で、久しぶりに押しかけてきたと思ったら、恋人とセフレの違いはなにか、て?」 夏休みが明けてすぐ、オレは家の大事な用があると一成に嘘を言ってここ、和哉(かずや)の家に来ていた。 和哉はオレが物心つく前からの友達で親友だ。 母親同士が仲が良くて家も近く、中学までは一緒だったけれど、高校は別のところに進んだ。ちなみに一成を『なり』と呼ぶのは和哉を『かず』と呼んでいるからだ。 「悪かったよ。夏休みの誘いを全部断って」 いつもなら夏休みに限らず、休みの日はいつも和哉と遊んでいた。それが高校が別れて部活もしている和哉と予定が合わなくなり、その分夏休みにいっぱい遊ぼうって言ってたのに、オレの予定は全て一成で埋まってしまった。 「それは別にいいよ。オレたちだってもう高校生なんだし、彼女が出来てもおかしくないだろ。でもそれをいつオレに言ってくれるのかと思ったら、恋人とセフレの違いだ?」 そう言うと和哉は片眉を器用に上げ、じっとオレを見る。 「彼女が出来たなら出来たって、(ゆず)はオレにはちゃんと言ってくれると思ってたよ」
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