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その後、飲食店やディスカウントストア、映画館にカラオケ、アパレル店舗、家電量販店や企業などを通り過ぎて行く。
しかし、どの店舗や会社も全て戸建てであり、高層階の建造物などは見当たらない。
車は先へと進んで目的地に近づいていくが、依然として、三階建て以上の建物は見当たらなかった。
タカは、四階建ての建造物に住む裏屋敷家の人間は何者ぞやと、疑問というよりは恐怖心を抱いた。
タカは、目的地のデパートがどのような外観であるのか、タロウのモザイクの先がどうなっているのかを知りたい、と思った時と同じ類いの好奇心を抱いていた。
「あ、デパートが見えてきた!」
陸がそう言って指をさすと、タカは「どこ! ムラサメ・デパートか!?」と、探偵が依頼者から捜してほしい人がいるとの依頼を受けて、喫茶店で捜してほしい人の写真を見ながら打ち合わせをしている真っ只中に、この店のスタッフにその写真の人物が居ることに、依頼者よりも先に気が付いた時のような表情で、縁日本のデパートたるものを細部に至るまで確認していく。
タカは「本当にこれがデパートなの?」と、指をさして尋ねると、陸は「そうだよ」と答えた。
タカにとってデパートといえば、七階建て前後の大型で立派な建造物であり、それぞれの階数によって、扱う商品のジャンルが異なっている店舗である。
だが陸の示すデパートは、まるで、公立の学校の体育館のような外観である。
建築面積も同じぐらいなのではないだろうか。建物の正面上部に、巨大なプロサッカーチームの横断幕のようなものが取り付けられており、「アウトドア用品売り場」とプリントされている。
タカは、販売されている商品は傷が付いているのではないのか。
店員はジャージ姿で、部活動として接客をしているのではないのか。
……室内の様子を想像していると、車はデパートを通り過ぎてしまった。
タカは慌てて「おいっ、何でスルーするんだよ?」と、運転手の男性に向かって問うた。
それに対して、運転手の男性は何も答えない。タカはもう一度きこうとすると、通り過ぎたはずの建物が再び出現した。
タカはすぐにこれは、外観の造りは似ているが、別の建物だと理解した。
そして横断幕のような物を見ると、「プライダル用品売り場」とプリントされている。
「なんだよ、こんなところで、結婚指輪とかウェディングドレスなんか売ってんの?」
タカがそう尋ねると運転手の男性は、「そうですよ。あとタキシードにウェディングケーキの予約なども行っていますよ」と答えた。
「そうなの! こんなところで、高価な貴金属とか取り扱ったりして大丈夫なの?」
「大丈夫といいますと?」
「盗難だよ。セキュリティーは大丈夫なの?」
「高価な商品を盗られるかもしれないという緊張感が、店舗の品位の向上に反映するのではないですか」
タカは、運転手の男性の発言に納得しつつも、反面、こんな学校の体育館のような所で高級もへったくれもあるかよとも思ったが、口には出さず……。
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