ギラギラ・ウルフ

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 タカは、この話題での意思疎通は難しいと思い、カードにプリントされている「ギラギラ・ウルフ」の風貌などの、限られた情報から物語を推測する。 (これが主人公のギラギラ・ウルフ――ダサくねぇか――太った短髪のオッサンがハッピを着て手にはマイク――履いているのは下駄でもサンダルでもなく、これはロングブーツか。なになに、台詞が書いてるぞ。「まずいぞ、暴飲暴食のせいでカラダが重い……」だと。――分かんねぇ、こいつはいったい何を生業にして、国民的アニメにまで成り上がれたんだよ……これしか考えつかないぞ)  タカは、推測した国民的アニメの内容が正しいかどうかを二人にジャッジしてもらうため、陸と店主の顔の中間地点辺りで、一度手を叩いた。  陸と店主は我に返ったのか、コンビを解消したかのような雰囲気を醸した。  タカはこの機を逃すまいと、「この主人公のギラギラ・ウルフっていうのは、司会者なんだろ? それで、さらわれたハナちゃんっていうヒロインを救うために得意の話術で敵を説得して、ギラギラ・ウルフの仲間にしていくっていう物語なんだろ? それしか思いつかねぇよ」と、早口でまくしたてるようにして尋ねた。  すると、二人は早くもコンビの解消を撤回したかのように再びそろって、「そんな物語で人気が出る訳ないだろ。なんでギラギラ・ウルフが司会者なんだよ」とタカを皮肉るかのようにして言った。 「それだったら、なんでマイクなんか持ってるんだよ」  タカはむきになっている。 「どこにマイクなんかあるんだよ?」 「……手に持っているでしょうが」 「……“アイスクリーム”のことか?」  タカは二人からそう指摘されると、改めてギラギラ・ウルフが手に持っている物を確かめる。 「……あっ、ホントだ! アイスクリームだ!……だったらこのギラギラ・ウルフって、祭りを楽しんでるただの一般客じゃねぇかよ」  タカはそう言うと、その後も数回のやり取りを行ったが、結局、『お助け魂・ウルフとハナちゃん』がどういった物語で、主人公の「ギラギラ・ウルフ」はなにを生業としているのか、真実を知ることは出来なかった。  タカは気乗りしなかったが、店主だけでなく陸からもこのカードは掘り出し物であり、絶対に手に入れたい一品だという要望があったので、仕方なく購入することにした。
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