1人が本棚に入れています
本棚に追加
タカは、手に入れたばかりのカードを「ほら、受けとれ」と言い、陸に手渡した。
陸は「よっしゃぁ」と言って受け取り、カードにプリントされたギラギラ・ウルフを見ると、目をつぶり大きなため息をついた。
「なんでそんな顔するんだよ。嬉しくないのか?」
「……このカード、三枚持ってる。四枚もいらない」
「あんた、あれだけ目を輝かせて欲しいって言ってたでしょうが!」
「お店でかざっているのを見るのと、家で見るのとでは違う」
「まだ店の中なんだし、嘘でもいいから嬉しそうにしてくれって」
タカは皮肉ではなく、本音である。
陸はタカの懇願の表情を理解したのか、「わかった」と言うと、一度舌打ちをした後に、満面の笑みをタカに向けた。
「舌打ちいらなくないっすか」
タカはたじたじである。
タカと陸は、目的の「ギラギラ・ウルフのパンツ」を取り扱っている店舗、というよりは屋台へと到着した。
目的の屋台の店主が、「いらっしゃい! ウチで買った衣服を身に着けて外を歩けば、周りから指を差されること間違いなしでっせぃ!」と、どう受け取ったらよいのか判断しかねる接客をしてきた。
タカは、店主の言った事を疑問に思った直後、「えっ!?」と驚いて店主の顔を指差した。
「どうしたんでぃ、いきなり大きな声なんか出せぇってぃ」
店主が目を丸くしてそう言うと、タカだけではなく陸も同じように驚いていたらしく、店主を指差して、「さっきのおじちゃん!」と大声で言った。
タカは「掛け持ちしてるの?」とききながら、先ほどのトレーディングカード売り場のほうに視線を移すと、半ば強制的にカードを売りつけてきた店主が、客に商品を手渡していた。
「双子なの?」と、タカは子供衣料売り場の店主に向かって問うた。
すると店主は、「馬鹿にしてるんかぃ!」と怒鳴りつけるようにして言った。
「目の前ででかい声出すなって、うるさいって――てかそっくりだろ」
「当たり前でぇ! 兄弟なんだから、似ているに決まっているでぃ!」
「やっぱりそうなんだろ! なんでキレてんだよ! 双子なんだろ!」
「ふざけるない! どこを見て双子なんて言っているんでぃ! あんたの目は節穴かい!」
最初のコメントを投稿しよう!