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「おっちゃん、わけわ、え? ――うっそ!」
「お、気が付いたかぃ」
タカは興奮のあまり、もも上げ運動をしながら、「すげぇなおっちゃん、いったい何人いるのさ」と言った。
「何人兄弟なのか当ててくだっせぃ。当たったら、どれでも好きな商品、一つプレゼントしまっせぃ」
「ホントに! ――全員男なの?」
「そうでぃ、男だけのハテナ子でっせぃ」
「ちょっと待ってて、いま数える」
タカはそう言うと、目の前に居る子供衣料品売り場の店主のおっちゃんをカウントし、そこを起点として、時計回りに似た容姿の男性を探していく。
「アクセサリー売り場」「お菓子、食品玩具売り場」「オモチャ売り場」、そして先ほどの「トレーディングカード売り場」と目の前にいる店主、合計で五人確認することが出来た。
タカは自信をもって、「おっちゃんも入れて五人だろ。おっちゃんは五つ子で間違いなし。どうだ?」
タカの答えを受けた店主は、「あちゃ〜」と声にだしながら、首を左右に振って“やられた”というような表情をしている。
「よし! おっちゃん、約束は約束だからね。好きな 商品を一個、タダでもらうからね」
タカはそう言うと、陸と向かい合って、二人でガッツポーズをした。
「いやぁ〜、お兄さんたち、惜しかったでっせぃ、残念、ハズレだってぃ」
「おい! 何言ってんだよ! こっちは丁寧に二周確認したんだからな!」
タカはみえすいた嘘を言うと、真実の二週目を丁寧にやり始めた。
「……おっちゃん、何が残念だよ。やっぱり、おっちゃんを含めて五人で間違いないって。おっちゃん、嘘はいけねぇな」
タカは、悪人を成敗するアクションゲームの主人公になりきっていた。
「……お兄さん、自分の物差しだけで決めつけるのはいけねぇでっせぃ。まだ確認していない方角があるんでぇねぇでぃ」
タカは、店主の言っている意味をすぐに理解して、「どういうことだよ!」と言いながら、慌てて真下を向いた。
店主は、タカが下を向き終えるのとほぼ同時に、「なんでそっちやねん」と、素なのかわざとなのか判断しかねるような、戸惑ったようなツッコミを入れた。
「誰もいねぇよ」
「いるわけねぇでぃ! 逆よ逆!」
タカは、「紛らわしいって、最初からそう言ってくれよ」と、不満げな表情をキープすることが出来ずに、含み笑いをしながら上を見た。
「……うおっ! もう一人いるわ! ――てか何の仕事っすか?」
建物の二階に位置する場所に、狭い通路がぐるっと一周しているキャットウォークに一人、仁王立ちで下のフロアの様子をうかがっている、何度も目にしている姿があった。
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