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「お、気が付いたみてぇでねぇ。正解は六人、六つ子の魚住兄弟でぃ」
「これは一本取られたわ。――てかおっちゃんの兄弟、あんな所で何してるの?」
「何って、仕事でしょうが」
「仕事?」
「お兄さん、防犯員がいねぇと、店は無法地帯と化してしまいますでぃ」
店主の説明に、タカは納得しつつも疑問を持った。
「……防犯カメラって、設置してないの?」
「“ボウハンカメラ”? ――なんでぃ、それは?」
「……カメラとか――写真ってあるの?」
「“シャシン”? なんでぃ、カメラとかシャシンとか、訳の分からんこと言いだしてぃ」
「……免許証の自分の顔って、どうしてるの?」
「そんなん、“リアルマン”が描いてくれるに決まってぃでぃ。お兄さん、頭でもぶつけて、一部分の記憶が飛んだんじゃねぇんですかぁ」
「……そうかもしれない。おっちゃん、車の免許証はいま持っていないの?」
「車の免許証はいま持ってねぇですけど、営業許可証だったら持っていまっせぃ」
「リアルマンが描いた、似顔絵入りなの?」
「そりゃそうでっせぃ、見ますかい?」
「うん、見せてよ」
タカが似顔絵入りの営業許可証を催促すると、店主は着ているハッピの内ポケットから許可証を取り出すと、タカに手渡した。
タカはすぐさま許可証の表側を観ると、カードには名前等の個人情報はいっさい記載されていなく、縦方向いっぱいにリアルマンが描いた、店主の肩から上の姿が確認出来た。
タカは、学校の給食時間に出てきたハヤシライスが、いつものスタッフで作ったものなのかどうかを鑑定するかのようなシビアな目で、リアルマンの実力を品定めしている。
「……これって写真じゃないの?」
「ですから“シャシン”ってなんでぃ?」
「本当に絵なんだ。すごくリアルだな――それでリアルマンなのか」
タカは、リアルマンの実力に心底感心している。
「リアルマンって、何人ぐらいいるんだっけ?」
「常時五千人って、法律で決まってるでねぇかい」
「どうやったらなれるんだっけ?」
「どうしたんでぃ、お兄さん。十五歳の誕生日の日に適正試験を受けたはずでぃ」
「――そう、そうだった。受けたけど緊張しすぎていてよく憶えていないんだよ」
「まぁ、確かにあの雰囲気は独特でぃ、分からなくもないでぃ。――その日が誕生日の生徒は、午後五時に在籍している学校の自分の所属する教室で試験を受けるんでぃ。画用紙と色鉛筆が席に置いてある。モデルとなる人物が五時ちょうどに教室に入って来る。モデルが自ら笛を吹いたら、制限時間の五分以内に正面からの全体像をデッサンするんでぃ。思い出したかい」
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