ギラギラ・ウルフ

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「ちょうど今、あそこで取材してるでぃ」  タカは店主の指差すほうに目を()ると、ギラギラ・ウルフアニメのフィギュアコーナーの店主が、全高が百七十センチ前後あるヤシの木みたいなのに話しかけているように見える様子が確認出来る。  よく見ると、その木みたいなのには手と足があり、ちょうど真ん中ぐらいに位置している所に、ペットボトルの飲み口ぐらいの大きさの丸い穴のような部分があり、緑色(みどりいろ)に発光している。 「あのヤシの木みたいなのがハッピョウシタロウなの?」 「そうでぃ、ハッピョウシタロウは百万本の木の中から、くじ引きで一本しか選ばれねぇエリート中のエリートなんでぇ」  タカは、実力で選ばれるのじゃないのかよと思いつつも余計なことは言わずに、「真ん中の辺りが緑色に光っているけど、あそこで撮影でもしてるの?」 「そのとおりでぃ、緑色に光っている時は、リアルタイムでテレビに放送されているんでぇ。そんでもって青色の時は、編集、精査をしてオッケーが出たら後日放送するんでぇ」  タカはおっちゃんの説明を聞いて、エリート中のエリートのわりには緑色と青色、似たような色合いで生放送と録画放送を区別しているなんて、やはり抽選で選ばれただけのことはあるなと思ったが、そこは口には出さず。 「そういうことか――あれ、インタビュアーのような人が見当たらないけど、おっちゃんの兄弟、一人でしゃべってるよ?」 「お兄さん、何を言っているんでぃ、ハッピョウシタロウはエリート中のエリートでぃ。話したりなんかしないでぃ。弟の心に問いかけている。だから嘘はつけないんでぃ。こっちの考えていることが筒抜けなのかどうか、分かったものじゃないからでぇ」  タカはデジタルなんだかアナログなのか、よく分からない光景だと思った。 「おっちゃん、オレの負けみたいだ。ギラギラ・ウルフのパンツとやらは、お金払って買うよ。リク、どのパンツが欲しいんだ?」  店主とタカがやり取りをしている間に、陸は欲しい商品の目星をつけていたのか、迷う素振りを見せることなく「これ」と言いながら、商品の前に行き手に取った。  タカは、「お、早押しクイズばりの反応の良さだな」と言い陸が手に取った商品に目を遣ると、落語の司会者みたいな口調で、「リクに座布団三枚」と言った。
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