ギラギラ・ウルフ

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「なんだよそのミニパンツは、パンツってリクが穿くやつじゃないの?」 「キャラクターの絵なんか入ったパンツなんて、恥ずかしくてはけない」 「そうか、小三って意外と難しい年ごろなんだな。――で、このミニュチュアサイズのパンツは何に穿かせるんだよ?」 「ギラギラ・ウルフのリアルフィギュア」 「どんな主人公だよ。おじさんが手にアイスクリームを持って、ハッピの中はブーメランパンツとか、苦労を知らない、ただの世間知らずだろ」 「――うるさい!」  陸は、タカがギラギラ・ウルフを悪く言ったことにご立腹したのか、地面を力強く踏みつけて威嚇(いかく)する。 「ごめん、そんなに怒るなって」 「じゃあ、もう一個買って」 「おう、いいぞ。そんなオモチャに着せる服なら、いくらでも買ってやるよ」  タカはフィギュアに着せるモノなら、せいぜい一品で五百円ぐらいだろうと思い軽い気持ちで聞き入れたが、そこは根が小心者の性分……。 「おっちゃん、このミニュチュアのパンツはいくらぐらいするの?」  タカは途端に不安になり、店主にパンツの値段を尋ねた。 「これかい、フィギュア用のやつだったら三百円でぃ。同じデザインで実際に人が穿く用のもあるでぃ」 「それはいくらなの?」 「そうでねぇ、お兄さんが穿けるサイズだと――」 「オレのじゃなくて、そんなダサいの誰が穿くかよ。この子のだよ」 「お兄さん、子供にこんなセクシーパンツですかぃ――まぁ、この子のサイズだと、一枚三千円のになるでぃ」 「たかっ、いりません。ちょっと気になったからきいてみただけ。リク、あと何か欲しいモノはないのか?」  陸は「それじゃあ」と言うと、フィギュア用の真珠のネックレスのようなモノを手に取ってタカに手渡した。 「これだけでいいのか? 遠慮するなよ」 「うん、これだけでいい」 「遠慮するなよって言っているのに、意外と律儀なとこあるじゃん。――それじゃあおっちゃん、これとこれ頼むわ。六百円ね」  タカはそう言ってズボンのポケットから財布を出して中から紙幣を取り出そうとすると、「お兄さん、なに言ってるんでぇ、六百円じゃ全然足りないよ。一万三千二百円だぃ」と、店主は慌てたようにして金額を述べた。 「ちょっと待ってよ! ひとつ三百円でしょ? 二つで六百円だよね?」  タカは想定していた金額の二十二倍の額を要求されたが、不意を突かれた形となったので、インパクトは二百二十倍相当である。
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