底辺志望・男『T』

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 タカは自室に入ると、全身が映る大きさの壁掛け鏡の前に立ち自分の姿を見た。 「くそっ! 何であいつらオレのこと怖がらないんだよ……お腹か?」  タカは原因がそこにあると思うと、着ている白色のTシャツをめくってお腹を出した。 「くそっ! なんだよこの可愛いお腹は、マシュマロじゃねぇか」  タカはカーペットが敷いてある床の上に仰向けになると、怒りの腹筋運動を開始した。 「一ちくしょう。二ちくしょう。三ちくしょう……二十八ちくしょう。にじゅうき、あぁん」  タカは怒りの腹筋運動を終えると、苦しそうな顔をして立ち上がって鏡の前に立った。 「なんだよ、三十回もいかないのかよ」  タカは目標の回数に届かなかった自分自身への怒りから、「タカタカ」へと覚醒した。  身にまとっている衣服を全部脱いで全裸になると、鏡の前でクルッと三回まわって、親指を立てて「いいねサイン」をした。  そしてタカは着せ替え人形のように、いちど脱いだ衣服を再び身に付けて、鏡に映る自分の姿を見た。 「いいじゃん、可愛いじゃねぇかよ」  タカは、思わず自分のマシュマロボディを見て顔を赤らめた。  そうこうしているうちに三十分ほどが経過して、一階に居る母からスマートフォンに電話がかかってきた。 『ごはん出来たから下りてきなさい!』 『おう、いま行く、てか聞こえてるよ。電話必要なくねぇ?』 「それもそうね! 早く下りて来て温かいうちに食べてね!」 「おう!」  タカは電話越しからではなく、一階から直接聞こえてくる母の声に対して、ダイレクトに下の階に聞こえるボリュームの声で返事をした。  タカは部屋を出て一階のリビングに行くと、ダイニングテーブルの上には一人ぶんの海鮮チャーハンと中華スープが用意されていた。 「カレーじゃないんかぁ〜い」  タカは思わず垂直に跳び上がりながらそう言った。 「結局チャーハンじゃねぇかよ。カレーじゃなかったのかよ」 「文句言うんじゃないの。食べるの食べないの」 「食べるよ」  タカはスプーンを手に取ると、朝から何も食べていなく空腹だったため、勢いよくチャーハンにがっついた。 「おかわり!」 「はいはい。美味しいかい」 「めっちゃ旨い。これなら五千円払える」 「調子のいいこと言っちゃって、お皿貸しなさい」  タカは空になったお皿を母に渡すと、智子は先ほどよりもチャーハンを多めにお皿に盛って息子に手渡した。 「はい、五千円ね」 「息子から金取るのかよ。てかどこのカリスマシェフだよ」 「冗談よ。もうおかわり無いけどまだ作るかい?」 「頼んだ、もう一杯行ける」  結局、タカは計四杯のチャーハンを食べ終えると、満腹で少し苦しそうにしながら、リビングにある三人掛けのソファーに倒れ込むようにして仰向けになった。  
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