魔性の飲み物なり

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明日は我が身だなとしみじみ思い返した。 大規模であろうと個人事業であろうと、学校であろうと3人以上集まれば偏りが生まれる。昨日の味方は今日の敵か…上司に悪態ついたこの日の午後を思い返してしまった。 ”その考え方が駄目なんだ、結果を出すってのは一発じゃない” ’相手がいる事ですし、押し売りや迷惑防止条例もあります。今は簡単に突っ放されます” ”みーんな、うる覚え、表面上の文句並べてんだよ。法律書のあらすじ読んで盾にしているんだよ。人は10万貰うと10枚きちんと確認する。だけどな、100万貰うとどうだ?2、3枚確認して終わる。10枚だけなら10枚数えるのに100枚となると途端に億劫になる。それは100万の厚みで満足されているからだ。だから、武器は20枚、30枚目あたりに隠せ。表面上の知識を褒めてこっちのペースにもってこい。お前も100ページ全部読破する必要ねーさ、30ページ、60ページに書かれていることを言えばいいんだよ” ”うーん、やはり結果的にはお客様は損をすることになるでしょうし” ”迫力だよ。客は最初の儲けで手を引けばいいだけのこと、要は疑っていた相手を信じていいとなった途端に栓がバカになるんだよ。そうなったら奴からはぶん取れ。ったく、やらねーんだったら、入替だな、善人ぶってんじゃねーよ、他社から借金抱えて死に物狂いで取り戻そうとしている奴だっている。奪うか奪われるか” 2席挟んだ男女の会話。 これもまた仕事がらみの関係らしいが、男の異様なまでの威圧感は本物。お洒落な隠れ家バーには不釣り合いかと思えば、謎多きバーテンダーとの相性は抜群にあう。方や女性は文系女子ではないか。昼間のカフェでパソコン開いてそうだけど、濃厚な文芸好きなのんべい娘ならばわずかな灯りで至高の一冊を読んでいてもいいのかもしれない。 ”な〜んで君みたいのがいるんかな〜、雇うのもただじゃねーんだわ。めそめそして俯いたら許されると思うなよ” ”すみません” ”ノルマって目標じゃないんだぜ。わかってる?” ”はあ” ”マスター!?マスターも飲んでよ。この娘とは話になんねーわ” 虚をつかれたように反応したバーテンダー、あらかじめ用意していたグラスを差し出し粗暴な男のグラスと合わせた。 わずかな世間話を繰り広げ、女性客に笑顔を戻す気配りはさすがな技と思った。 グラスを空にした2人は勘定を済ませて店を出ていった。 ”あの娘、早い事に別の仕事を見つけるといいね。あまりに肌に合わないところにいると今日の良心もしぶくなってしまいそうだね。ところでマスターは何を?” 上下黒と白の二層にくっきり分かれている、ねっとりとした飲み物 ”そうですね。やり甲斐がある仕事が見つかるはず。これはbroad-mind of kindnessです” 目が去った後の男女の空きグラスに移る 部下をこき下ろす男が飲むたびに少しむせていた和風カクテル ”the eager split hell's vinegar" 物静かながら、知性があり、心の軸がしっかりしていそうな娘のお茶ベースのドリンク ”regret of haste - aged tea base" バーテンダーのお気に入り ”broad-mind of kindness"
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