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ここに、最恐最悪の鬼が封じられていることは知っている。蒼鬼と名付けられたその鬼が、見た目は人間の男と変わらないことも知っている。だが、挨拶してくるなんて予想できない。
しかも、廊下から差し込む光で見えたその鬼が、白い着物と袴姿で、両手両足を荒縄できっちりと縛められているというのも、異様な緊張感を生んだ。
部屋に備え付けられた椅子に座っている。顔は長い前髪のせいでよく見えないが、整った顔立ちだろうことは、そのすっと通った鼻筋から想像できた。髪は全体的にも長く、腰くらいの長さがある。それが、後ろで一つに纏められているのだが、緩んだのか、ぼさぼさとしていた。
年は二十代前半だろうか。時雨たちよりも少し上の印象だ。そんな蒼鬼は、にやりと口を歪めて笑うと
「わざわざ封印されている鬼に、何の用かな?」
そう問うてきた。
しかし、三人はまだ鬼の雰囲気に飲まれて答えられなかった。
「おいおい。お前らは俺に会うことが出来るほどの、神社本庁指折りの陰陽師だろ。しかもこっちはこの通り、身動きが取れない。ビビってないで、さっさと用件を言ったらどうだ?」
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