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蒼鬼の挑発するような言葉に、ようやく時雨は動くことが出来た。二人に向けて自分が行くと目で合図すると、一歩、蒼鬼に近付いた。それでも、まだ封印の間に入る勇気はない。
「用件は一つだ。姫様の護送。それを手伝え」
だが、何とか高圧的な態度を崩さないように、そう乱暴に告げた。
「姫様?」
それに蒼鬼は何だっけと首を傾げたが
「ああ。俺と対極のような存在の『清浄の姫』か」
と、何を護送するかは理解したようだった。しかし、すぐに眉間に皺を寄せると
「そいつの護送とはどういうことだ? たしか、姫は俺と同様に封じられているはずだろう」
そう訊ねてきた。
その理知的な様子に安心した月見が
「姫様は封じられているわけではありません。お眠りになられているだけです」
やんわり訂正した。
「ははっ。物は言いようだな。まあいい。それで? 姫様の護送だっけ。なんでだ? わざわざ眠り姫を起こすようなことはしなくていいだろ? しかも、わざわざ苦労してこうやって封じた鬼の手を借りてやることなのか?」
小馬鹿にしたような笑みを浮かべて、蒼鬼は問う。
その態度にむっとしたものの
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