蒼鬼と清浄の姫

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 その瞬間、三人はぎゅっと心臓を掴まれたかのような気分だった。 (これが、最恐最悪と言われる蒼鬼)  ごくりと、時雨は唾を飲み込んだ。そして、時雨の中にあったある疑惑が、その顔を見て確信に変わる。 (こいつだ。間違いない)  燃え盛る炎に包まれる神社。  その足元に転がる無数の死体。  それらの中心にいて、笑みを浮かべていた男。  知らず、ぎゅっと拳を握っていた。  それに気づいた蒼鬼は、おやっと目を見開いたが、三人が気づく前に元の笑みに戻すことで、気づかせなかった。 「悪い悪い。これからは一応、仲間になるんだったよな。脅かしすぎたか」  ついでに冗談を飛ばし、三人の意識を現在に引き戻してやる。 「そ、そうだ。姫様の護送には、お前のその桁外れの力が必要だ。封印の限定解除に移る」  時雨ははっとし、今はまだ我慢だと自分に言い聞かせる。 「限定解除ね」  蒼鬼はそれにも嘲笑うような笑みを浮かべるだけだ。お手並み拝見というところか。 「俺たちの命令に逆らえば、貴様の身体が無事ではすまんぞ」  それに対し、時雨は受けて立つように告げていた。
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