蒼鬼と清浄の姫

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「神社本庁に動きがありました。奴ら、蒼鬼を利用するつもりです」  反神社本庁派閥の本拠地ビル。そこで行われていた会議の最中、そんな報告がもたらされた。当然、会議室は騒がしくなる。 「蒼鬼だと」 「厄介な」 「外に出すなど狂気の沙汰だ」  そんな意見が多数だ。能力があるゆえに、蒼鬼の強さは嫌というほど知っている。どう利用するつもりか解らないが、楽観視できないということだろう。 「静まれ。慌てるな。どうせあいつらが蒼鬼を自由にするはずがない。外に出したところで、頑強な首輪をつけ忘れるはずがない。いたところで、少々強い陰陽師が増えた程度だ」  そんな会議室に、別に怒鳴ったわけでもないのに、よく通る声がそう告げた。  声の主は高校生だ。  不真面目に着た制服、だらっとした態度で椅子に座る様子は、ただの不良高校生だ。しかし、その目の鋭さは、一般的な高校生にはないものである。ついでに、その整った顔は、集った大人たちを黙らせるだけの圧を持っていた。 「由比(ゆい)様」  この報告を持ってきた榎本涼音(えのもとすずね)は、驚いたように少年に声を掛ける。 「蒼鬼は脅威になり得ない」
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