蒼鬼と清浄の姫

9/111
前へ
/111ページ
次へ
 そんな涼音に、由比は余裕の笑みを浮かべた。それに、会議室にはほっとした空気が流れる。  そう、彼こそ本庁に反旗を翻した陰陽師たちのリーダーだ。その力は誰よりも強く、蒼鬼に匹敵するのではと目されている。 「しかし由比様」 「油断はなりませんぞ。あれほど厄介な鬼、記紀神話にも載っておりません。完全に封じる方法が解らぬ存在ですぞ」  が、やはり楽観視は出来ないと、幹部級の二人、川原(かわはら)ミズチという通称を持つ二十代の男と横瀬翁(よこせおう)と呼ばれる顎髭が特徴的な七十代の老人が由比に詰め寄った。 「油断できないのは、限定的とはいえ蒼鬼を外に出そうとしている本庁の連中だろ」 「そ、それはそうですが」 「万が一にも、奴が自由になったら」 「その時は鬼退治だ。それだけだよ。戦いが一時休戦になるくらいの影響しかない」  それに対し、由比はどこまでの冷静だ。 「さすがは由比様です」  由比に絶対的信頼を置く榎本が笑顔になって頷く。二十二歳の彼女は、由比に忠誠を誓っていると言ってもいい。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

32人が本棚に入れています
本棚に追加