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そんな涼音に、由比は余裕の笑みを浮かべた。それに、会議室にはほっとした空気が流れる。
そう、彼こそ本庁に反旗を翻した陰陽師たちのリーダーだ。その力は誰よりも強く、蒼鬼に匹敵するのではと目されている。
「しかし由比様」
「油断はなりませんぞ。あれほど厄介な鬼、記紀神話にも載っておりません。完全に封じる方法が解らぬ存在ですぞ」
が、やはり楽観視は出来ないと、幹部級の二人、川原ミズチという通称を持つ二十代の男と横瀬翁と呼ばれる顎髭が特徴的な七十代の老人が由比に詰め寄った。
「油断できないのは、限定的とはいえ蒼鬼を外に出そうとしている本庁の連中だろ」
「そ、それはそうですが」
「万が一にも、奴が自由になったら」
「その時は鬼退治だ。それだけだよ。戦いが一時休戦になるくらいの影響しかない」
それに対し、由比はどこまでの冷静だ。
「さすがは由比様です」
由比に絶対的信頼を置く榎本が笑顔になって頷く。二十二歳の彼女は、由比に忠誠を誓っていると言ってもいい。
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