蒼鬼と清浄の姫

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 神社本庁が所有する、東京の(うしとら)の方角にあるとあるビル。ここには封印の間と呼ばれるものがあった。  地下三階、そこにある厳重に封じられた扉、数々の呪符、そして結界を示す注連縄(しめなわ)が、その名に嘘偽りがないことを伝えてくる。  そんな厳めしい扉の前に今、三人の高校生がいた。 「ここあの鬼が」  声に僅かな恐怖を滲ませて呟くのは、セーラ服姿にポニーテールの、仕事上の名前は月見(つきみ)という少女だ。 「ああ」  それに短く答えるのは、ブレザーの制服を着る少年。真面目な雰囲気だというのに、どこか好戦的な気配がある彼の仕事上の名前は時雨(しぐれ)。 「お前ら、気を抜くなよ」  そんな緊張する二人を気遣うように、冗談めかして言うのは、時雨と同じブレザーの制服を着る少年、青葉(あおば)だ。 「ほう。珍しい」  そんな三人の気配を、封印の間の内部に閉じ込められたモノは感じ取って笑った。だから、封印が解かれ扉が開かれると同時に 「やあ、皆さん」  と声を掛けていた。 「っつ」  一方、声を掛けられた三人は固まってしまう。
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