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「はは、かーわいい」
「からかわないでよ」
そうぐりぐり頭を撫でられて
私は千博の腕の中でぷいっと顔を背ける。
千博も言ってくれるかと思ったけど
どうやら“お返し”はないらしい。
じっと待っていると
背後で千博が小さく笑って、私の身体にそろり手を伸ばしてくる。
「『一つ。必ず同じ布団の中で抱き合って眠ること』」
そう毛布の中をごそごそし始めた千博の手を
思わず軽く握って制する。
「……なにこの手は」
「ちっ、目ざといな」
じろりと私が振り返ると
ははっと声を上げて、千博が笑う。
それからもう一度ぐりぐり私の頭を撫でると
柔らかく微笑んで、千博は私に優しいキスをした。
「俺も好きだよ、沙月」
千博がそう幸せそうに笑うから
私も思わず微笑んでしまう。
予感がする。
微かに、だけど、確かに。
千博と2人で幸せになれる
そんな明るくて予感。
“片恋同盟”は解消した今。
同盟を結びましょう。
今度は、両思い同士の同盟を。
2人で一緒に笑顔になるための
穏やかで優しい約束を。
*Fin.*
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