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「『一つ。これは両思いの2人の同盟である』」
片思い同士の時の同盟のオマージュ。
おどけた千博がわざと寄せに行っていることに気付いて、思わずくすくす笑ってしまう。
それなら、と。
私は少し考えてからおもむろにその口を開いた。
「『一つ。互いの悩みや不安は必ず打ち明け、隠し事はしないこと』とかは?」
「お、いいね」
乗り気になった私に
千博がどこか嬉しそうにクツクツ笑う。
それから私の肩を抱いたまま
その頬を寄せるようにして、笑いながら続ける。
「『一つ。互いの想いは積極的に伝えること』」
そう続けてから千博は少しだけ意地悪く笑う。
「沙月、苦手そうだから入れとこ」
「……別にできるもん」
「あ、ほんと。じゃあ言ってみて」
そうニヤニヤする千博に
私は多分赤い顔をしながら思わずむくれてしまう。
それから小さく千博を睨んで
引き寄せた毛布で顔を隠しながら、消えそうな声で呟く。
「……好き」
照れながらそう口にする私に
目の前の千博の顔が微かに綻ぶ。
少し分かりにくいけど
喜んでいるのがなんとなく伝わって、こっちはますます恥ずかしくなる。
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