光の中へ

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 そもそも彼とは雑談すらしたことがない。気に障るような事をした記憶ももちろんないし、嫌われる切っ掛けなどないはずなのに、なぜかいつも距離を置かれていると感じてしまう。  私と話すときの声もやたらと小さい。たぶんそのせいで今までに、いくつか連絡事項を聞き逃している。店長やほかのバイト仲間と話しているのを見た事があるけれど、普通に視線を合わせるし、普通に声も出していたように思う。  ただ単に年下の女性が苦手なのかもしれないと、そんな事も思った。  そういうふうに思おうとした。  まだちゃんと心が回復しきれてない私には、ちょっとしたことも痛手になってしまう。  なるべく傷が深まらないように、不安な事は解消していきたかった。    商品の補充や店先の掃除を終えた頃、白々と空が明るくなってきた。いいお天気だ。  まるで夜明けを恐れるように足早に店を出て行った、さっきのドラキュラさんは、無事に家に着いただろうか。
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