光の中へ

9/18
前へ
/18ページ
次へ
 たかが失恋なのにと、今でこそ思うけど、あの時の孤独と自己嫌悪は、やっぱりどうしようもなかった。なんでこんな賑やかなところに来ちゃったんだろうと、それすら哀しくなった。  友人がその時ちょうど、アイスの食べ過ぎでトイレに行ってくれてたのは、不幸中の幸いだった。あんな子供みたいな泣き方を、やっぱり友達にだって見られたくない。  知らない大人や、幼い子たちが奇妙な目で見て通りすぎて行くのが分かった。どうか、立ち止まらずに、私など見ずに、過ぎ去っていってください。かわいそうな子だなんて思わないで。気にもとめないで。別の世界のホログラムか何かだと思って、見ぬふりをしてください。お願いだから。  でも、そんな想いを無視するものがあった。  周囲の光を取り込んだようなキラキラしたそれは、いつの間にか目の前に立っていて、いきなり私を包み込んだ。  ついさっきまでたった一人だけだった私の世界に、新しいそれが加わった。たぶんそれは禁をおかしたのだと思う。私のために。  はっと現実に戻ると、いつの間にかステージの音楽はやんでいた。  辺りにはさっきまで行儀よく座っていた幼児たちが、キャッキャと走り回り、あの日の記憶から抜け出した私は、また一人になった。  周囲をそれとなく見渡してみる。  今朝、ワクワクした自分がちょっと気の毒でもあった。また会えると、どこかで思ってたんだな、私。 「亜実~、待たせてごめん。ドラゴンバイキングめっちゃ面白かったよ。今度、体力ある日に亜実も一緒に乗ろうよ!」  友人2人が頬を紅潮させて走って来た。私は、大きく頷いて笑って見せたけれど、また本当に来たいかと問われればちょっと考えてしまう。私が会いたいものに会えないのなら、来るたびにきっと寂しさを感じてしまう。だったら、何の期待も最初からない場所の方がいい。  また少し臆病になる自分がいた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加