CDショップ「未来館」と悲しき歌声

　ここはCDショップ「未来館」。未来で流行っている音楽のCDをレンタルできる、不思議なお店。

　東京郊外。ただでさえ人通りの少ない道に隠れるようにひっそりと建つこのお店は、お世辞にも繁盛しているとは言えません。
　まぁ店長である私が「面白いもの見たさ」で始めた店ですので、採算は度外視で問題無いのですが。

　客の来店を心待ちにしつつ、一方でどうせ今日も誰も来やしないと半ば諦め気分で、レジ内の丸椅子に腰掛けてダラダラしておりましたが、突然、入り口のベルが鳴りました。
　久しぶりの来客です。慌てて居住まいを正し「いらっしゃいませ」とお声をかけます。

　店の入り口に立っていたのは、極めてオシャレで個性的な……これはいわゆる古着コーデというのでしょうか？　とにかく、そんな格好をした青年でした。おそらく20代後半ぐらいと見受けます。
　ただ、それだけこだわりの強そうな服を着ているわりに、履いているスニーカーは穴が空いていたり、ショルダーバッグは色が褪せていたりと、何かと訳ありそうな印象です。