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「実は、お客様にご来店頂いた数日後、未来の改変が起こりました。お客様がCDレンタルされたバンド『ヘブンリー・ワールド』が、音楽シーンから忽然と姿を消したのです。跡形もなく、まるで最初から居なかったかのように」
「そ、そうなんですか」
「なんともタイミングが良い話だとは思いませんか?」
「……何が言いたいんですか」
「本当は、お客様がレンタルされたCDも消えてしまったのでしょう? 忘れたのではなくて」
「……」
「理由は、お客様の誤ったご利用方法によりバンドの存在自体が無くなってしまったから。お客様以外であのバンドのCDをレンタルされた方はいらっしゃらないので、他に考えられません」
黙って俯く青年。やはり後ろめたい気持ちがあるのでしょう。私はさらに追及します。
「では、そのご誤った利用方法とは何か。考え得る一番の可能性は、お客様がアルバムの曲を盗作して世に発表してしまったということ。誰かが先に発表してしまえば、それはもうヘブンリー・ワールドの曲ではなくなってしまいますからね。
……たまにいるのですよ、あなたのような困った輩が」
おそらく、青年はおそらく売れないシンガーか何かなのでしょう。売れっ子になりたいあまりつい魔が差してしまったのだと、私は推測しました。
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