序章

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序章

俺はヒーローだ。 ヒーローといえば、みんなはどんなものを思い浮かべるだろうか。 マント羽織って、力が強くて、悪を挫き、弱きを助ける。 悪を倒した後は、子どもたちに囲まれて。 さすがはヒーロー!と褒め称えられる。 優しくて、笑顔で。 そんなヒーローを思い浮かべるに違いない。 だけど、俺は違う。 「おーい。依頼が入ったぞ。ケンヤ」 「ああ」 悪を挫き………か。 うん、まぁ。 一部の人にとって、俺の存在はありがたい…………かもしれない。 多分? 分からないけど。 まぁ、でも俺はテレビとか漫画で活躍するようなスーパーマンじゃないし。 子どもたちの人気者でもない。 大人たちの人気者………ってわけでもない。 だけど、ヒーローなんだよなぁ。 事実なんだから、仕方ない。 こんなヒーローいてたまるか!って、きっと思われるだろう。 なんせ、俺の武器は拳でも、蹴りでもない。 光線銃撃つわけでもなければ、誰かの応援が力になるわけでもない。 ………水鉄砲。 水鉄砲が何だ?って? 俺の武器だ、水鉄砲。 バカも休み休み言え? 冗談なら、どんなに良かったと俺自身何度も思ったよ。 けど、これも事実なんだから仕方ない。 まぁ、なんのヒーローかは………実際に見てもらおうかな。 依頼主は………、今日は男性か。 ってことは、水鉄砲の餌食は女性ってことだ。 あ、いや待ってくれ。 断言はできないな。 昨今、依頼主が男性としても、この武器の相手は女とは限らないし。 ん?今のでピンときた? 頭がいいね。 そう、だけどネタバラシは数行後だよ。 とにかく、俺はスーツに着替える。 一張羅ではない、うんごめん。 分かってるよね、ちょっとしたジョークさ。 ん?スーパーマンがきてるようなものだろうって? アメリカじゃないから、違うよ。 世界探せば、同じようなスーツ着てる映像作品あるかも? まぁ、そうだなぁ。 だけど、ここはアメリカとか日本とは掛け離れた場所だ。 俺の住む世界は、あなたたちにとってバーチャル………まぁフィクションの世界だからね。 アメリカや日本って場所があることは知ってる。 だけど、それは俺にとって……いや、俺たちが住むこの場所の住人にとって未知なるものだ。 アコガレ………があるか? 未知だからこそ、いいって場合もあるだろう? おっと、すまない。 かなり時間をとってしまったね。 まだまだヒーロー歴も短いし、こうした前向上が長くなるのはいけない癖だ。 例え武器が水鉄砲だとしても。 いつかは、人の役にたてるかもしれないだろう? やってきたアパート。 築何年経ってるのだろうか。 うーん。 これは、ちょっと危ないなぁ。 一階で良かった、のかな。 二階だったら、俺の体重かけたら崩壊してたかも。 俺は、機敏に動けないし。 運動は苦手だ。 じゃあ、なんでヒーローしてるのかって? まぁ、色々あるんだよ。 あとから、時間が空いたらゆっくり話そう。 これは、俺のものがたり。 きっと、それを話す時間もあるさ。 ひとつ言うなら、誰にだって悩みはあるし、つらくて忘れたい過去もあるってこと。 あぁ、ごめん。 時間だ、後からまた話すからちょっとお預け。 「………は」 「………っ」 あのね、これはこの作品書いてるひとが精一杯考えてなんとか形にしたことば。 本当は、もっともっと書けないような言葉のオンパレード。 大人の世界、といえばわかるよね? 問題なのは、今このベッドにいる2人が真実の愛がうんたら〜って言い訳しちゃうヤカラってことだ。 何が真実の愛なんだろうね。 ………依頼主に今日も同情しちゃうな。 依頼主は会社にいる。 俺の相棒が、ちゃーんと確認済み。 つまり、この家にいるひとは…… あぁ、いけない。 考えこむのも、俺の悪い癖。 (しっつれい、しまーす) 邪魔しないように、そぉっとベランダに近寄る。 声大きくて近所に聞こえてるよー。 こころから、笑っちゃうよね。 語尾にハートマークいっぱい飛び散らしながら、女性がキスをねだってる。 わぁ、気持ち悪い。 とっとと、やっちゃお。 ベランダを、そうっと開けた。 鍵かけてないなんて、不用心だなぁ。 ま、好都合だけどね。 ほら。大丈夫、気がついてない。 水鉄砲を構える。 子どもが背負って使うタイプに似てる。 まぁ、水量はまーったく可愛くない量だけど。 (はっしゃー!) ベッドにいる2人に多量の水を発射した。 キャー!!!!ギャー!!!! あ、うるさい。 退散退散。 あとは、依頼主に任せよ。 「ケンヤ、依頼主がありがとうってさ」 「そ。良かった」 武器を作った博士が、満足げに笑う。 「やっぱり俺の発明品はいいだろ?」 「ん。まーね」
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