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「……城くん」
「何ですか?」
僕の右手を握ったまま運転する横顔を見つめて口を開くと、城くんはチラッとこっちを見て微笑む。
「ぼ、僕は四十一歳のオジサンですよ?」
「俺だってそのうち四十一になりますよ。嫌ですか?」
「そんな訳!!」
「ね?そんなの関係ないんですよ」
サラッと言われ過ぎて深く考えられない。
関係ないはずはないのに城くんがあまりにも軽く言うせいで悩むのがバカらしい気もした。でも、
「……僕は料理も掃除も何もかも……家事だって何もできません」
今ある不安をできるだけ吐露しておきたい。
ダメな僕のことはもう知られているとは思うけど……確認しておきたかった。
「それは俺の楽しみですよ。取らないで下さい」
ためらうことも面倒くさがることもなく、あえて僕が受け入れやすい言葉を選んでくれる城くん。
「後は何かありますか?」
感じ取って更に優しく聞いてくれて、僕は繋いでいた手に左手も重ねた。
「……せ、先生はもう諦めてくれますかね?」
「もう二度と触らせませんよ」
フッと笑って城くんはただ前を見ている。
だが、不意に僕の手をしっかりと握った。
「優希さんが安心して俺だけ見ていられるようにしますから……。もう姉さんにも母さんにも……自信を持って紹介できますよ?」
運転しながら僕の手を導いて口をつけてくるのはズルい。
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