《拾弐》夏影に溶ける想い

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「••••••四之宮でも、おかしなことを考えたりするんだな」 年相応と言ったところなのか。僕にはない考え方が、異性である四之宮の中にはあるようだ。春画が教室で出回るくらいだし、それぞれ欲求は確かに存在していた。四之宮にはないだなんて、断言出来る要素もない。 春画が一体何をしているものなのか理解している分には、彼もそれなりに成長しているみたいだ。 逆に何なのか言われるまで知らなかった僕は、成長が遅れているとも取れてしまうが――。それは、つい先程目の前で倒れた青年が隠し通したせいだろう。 温くなった手拭いをまた水に浸し、額の上に乗せてやると冷たさが分かったのか、ゆっくりと四之宮の瞼が開いた。 「かずは••••••私は何で寝て••••••。記憶が曖昧なんだが••••••」 「暑さにやられたみたいだ。急に倒れて、びっくりした」 「すまない••••••」 額からずり落ちそうになっていた手拭いを自分で定位置に戻した四之宮は、熱の篭った溜め息を吐いた。まだ身体の中が熱いらしい。窓も一応開けているとはいえ、入ってくるのは生温い熱風未満のもの。それで身体が冷えるとは到底言えなかった。 「喉乾いただろう。水筒の水、飲むか?」 「少し」 僕は四之宮の荷物の中から水筒を取り出して蓋を開け、一人で起き上がっていた四之宮に手渡す。すると少しと言いながら、ゴクゴクと勢いよく一気に飲み干してしまった。僕のことを気遣うばかりで、肝心の彼はこれまで一口も水を飲んではいなかった。 元の水分不足も倒れた要因であろう。
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