《拾弐》夏影に溶ける想い

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「山なのに暑いな」 「山は山でも、低山だったな。普段の地と大して変わらない••••••」 「山って、何処も涼しいんじゃないのか••••••」 少しは涼めるだろうと期待していたのに、何だか一気に気力が削がれた気がする。決して涼みに来た訳ではないが、暑い中での体力作りとて限度というものがある。酷暑ともなれば中断になるだろうけれど、まだ耐え凌げる暑さの今、そうなる確率は低い。 「水浴びしたい••••••。泳ぎの授業があればいいのに」 「だ、駄目だそれは!ぜ、ぜぜぜ絶対駄目だ!」 ボっと顔から火が吹く勢いで、四之宮は顔を真っ赤に染め上げた。頭をブンブンと横に振り、必死に駄目と否定する。とは言っても、何も全身に水を浴びる訳ではない。足の先をちょっとだけ水に浸すだけだ。 「僕が心配なら、自由行動の時に一緒に足だけでも水につ――」 「一緒に!?そ、そんなことをしたらっ、色々とす、透けたり••••••」 「いや、透けることはないんじゃ••••••」 「す、透けたら、危ない••••••。ま、丸見え••••••に」 沸点に達してしまったらしい四之宮は、仰向けのまま傍の草むら目掛けて倒れてしまった。学用品はしっかりとその腕に抱えられ、真っ直ぐな姿勢なまま微動だにせずに横たわっている。 「四之宮!?おいっ、四之宮!!」 「す、すけて••••••みえて••••••」 これ以上彼を外に置いておく訳にもいかず、僕は引率の教諭を呼び、四之宮を小屋へ戻して備え付けのベッドに寝かせた。僕は彼の付き添いとして小屋に残ることになり、僕は四之宮の調子がよくなるまで授業を免除されることになった。 教諭が小屋から出て行った後、僕は小屋に置いてあった桶を持ち、急いで近くの川から水を汲んできた。そして持ってきていた手拭いをその冷水に浸した後、熱を持つ彼の額に置く。
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