《拾弐》夏影に溶ける想い

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* 結局、四之宮は夕食の時間になるまで眠り、僕もそのすぐ傍で転寝(うたたね)をしていた。西日が眩しくなる時間帯――外が騒がしくなってきた頃に目覚めると、寝ていたはずの四之宮は身嗜みを整え終えていて、何故か僕が彼の寝ていたベッドに横になっていた。 「何で僕がここに寝て••••••」 「あぁ、起きたのか」 「もう、体調はいいのか?」 「すっかり元通りだ。この山を五周出来るほどには回復したぞ」 要は一回眠っただけで、彼の身体は驚異的な回復を見せたらしい。僕は未だボンヤリとした脳を働かせて、まず身体をベッドから起こした。湿っぽい風に乗って外の喧騒が聞こえてくる。薪を割る、包丁はどう持つのかなど、会話の内容は多岐に渡っていた。 「僕達も行かないとな。今日一日、殆ど動いていないし」 「さっき先生に確認してきたんだが、私達は調理を担当するそうだ。何を作るかは調理の班の生徒に聞け――らしい」 僕がベッド上から床に足を着くと、体重でギシッと軋んだ。端に寄せられていた靴を履いて、一度目を擦ってから完全に目と意識を覚醒させた。 「殆どの生徒は包丁はおろか、土の付いた野菜にも触れたことがないだろう。"食事は出されて当たり前"という概念が植え付けられているんだ。そのねじ曲がった意識を修正する目的がありそうだな」 「わ、私も頑張るぞ。料理は練習したら、出来るようになるか?」 「練習あるのみ。僕なんて、初めて一人で揚げ物を作った時に爆発させたしな」 「ば、爆発••••••?」 今回、人員がほぼ料理未経験で構成されている為、難易度の高いものは作らない••••••もとい、作れないと思う。白飯を炊き、味噌汁と主菜が作ることが出来れば上出来の範疇になることだろう。副菜を同時に用意出来るほどの器用さを持つ奴が、ここにいるのかすら怪しいのだ。 そこまでは流石に教諭は想定していないと思っている 「おーい、四之宮ぁ!また倒れてんのかぁ!」 「今行く!」 「早く来て野菜洗って切ってくれ!」 小屋の外から生徒の一人の声がして、僕もその場で立ち上がり、最後にもう一度手で髪を整えた。野菜を切るくらいなら僕でも出来るようになったし、四之宮もきっとすぐに出来るようになるはず。 この時は、まだそう思っていた――。
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