《拾弐》夏影に溶ける想い

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「ど、どうにか形になったのではないか!?」 「白飯も炊けたし、味噌汁も出来上がった。釣った川魚は今焼いているところだから――あとは盛り付けて終わりだな」 人数分の食事が出来上がり、一先ず気が休まる時が来た。四之宮の左人差し指には痛々しく包帯が巻かれているが、血は滲んでいない。もう止まってしまったようだ。 川魚は僕達がそうこうしているうちに、他のクラスメイトが川で釣り上げてきた。種類はヤマメとイワナだった気がする。川魚はあまり口にしたことがない為、取り上げず塩焼きにしているのだが。焦げすぎないか心配で、僕は頻りに魚が焼かれる火元の方を見ていた。 貴重な食料を無駄にすることは避けたかったのだ。 それに四之宮が苦笑する。 「そんなに心配しなくても、他が見てくれているじゃないか」 「――でも、焼き加減は結構大事なんだ。あまり焼きすぎると脂が落ちて、美味しさも半減するから」 「••••••家庭の知識がどんどん豊富になって、これではいつでも嫁げてしまいそうだな」 「なっ!べ、別にそういう意図はない!それに男なのに嫁ぐのはおかしいだろう!」 自分でそう言ってしまってから、胸の奥がズキリと痛んだ。周りに自分の存在を隠す為に言ったことで、四之宮だってこの場では冗談で言ったことだというのに。僕の心はそれを真に受けてしまっている。 「あくまで例え話だ。••••••仮にそうだったなら、高嶺の花になっただろうと思っただけだ」 スっと妙に冷え切った声で言われ、咄嗟に機嫌を損ねさせたと思ってしまった。動揺のあまり切り捨てるような言い方をしてしまったと自覚している為、すぐさま謝ろうと口を動かそうとするも••••••四之宮の顔を見て思い留まってしまう。 (これは、怒りではない?) 怒っているというよりも、まるで子どもが拗ねているような顔だった。機嫌が斜めになってしまったことは確かなのだけれど、謝るべきかそうでないのか悩ます顔付きで。こちらも反応に困ってしまい、口の中で言葉を生み出しては飲み込むばかり。
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