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真澄が誰かと食事をして夜遅くなると言う日は、間違いなく男と会っている。直接現場を見ることはなかったが、なんとなくわかってしまう。化粧や服装まで違うし、そんな日は必ず帰ってきてすぐにお風呂に入っている。
そして僕は、その日に限って真澄を手荒に抱く。
真澄が離れていくことが怖くて、口に出せない本心を真澄の中に放つ。そうやって、真澄の気持ちを繋ぎ止めようと必死だった。
それでもやはり、心が壊れそうになってきた。本心を隠したまま、何もないフリを続けることは、とても心の負担になるらしい。
___どうすればいいのだろうか
ハッキリさせた方がいいと言われることはわかっていても、何かしらの方法でこの気持ちを紛らわせることはできないかと、スマホをいじって呟きを流した。お節介な誰かが、ガツンと言ってくれれば何かが動きそうな気もする。
呟きに対するコメントは、おおかた、似たようなものだった。男らしくハッキリさせるべきだとか、相手の男も探し出して慰謝料を取るべきだとか、そんな妻などさっさと捨ててしまえとか。
わかっていることばかりが続いて、諦めかけた時に、あの女性を見つけた。ハンドルネームは、ナオという。
《わかります。言いたくても言えない、言ってしまうと終わってしまうから。愛してるから失いたくない、どうにもできない気持ちが》
わかってくれる人がいたことに、ホッとした。
〈わかると言ってくれて、ありがとう〉
返信した。
《あの、ご迷惑でなければ私の話も聞いてもらえませんか?》
___まさか新手の詐欺とか?
一瞬だけ疑ったけど、それならそれでもいいかと投げやりな気持ちもあった。ただこんなことを話し合える人が欲しかった。そのままの気持ちを直接DMで送る。
〈あなたも、そんな境遇なんですか?ご主人が?〉
初めましても挨拶も書かずに、要点だけを送る。
《はい。女とのLINEのやり取りを、偶然見てしまったんです。見なければよかったと後悔していますが……》
___偶然か
〈僕はホントに偶然、その場にいあわせてしまったんです。それからというもの、妻の言動を全て疑っています〉
《その場に?浮気の現場にですか?》
〈そうです。それがなければ、気づかなかったかもしれません。妻の隠し方がうまいというより、僕が鈍感過ぎるのだと思います。でも、知らなければこんなに苦しまずに済んだのにと……〉
《そのことに、奥様は気づいてるんですか?見られてしまったということに》
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