架空のデート

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架空のデート

〈わかりません。でも、そんなをしてきたと思われる日に限って、僕は妻を強く蹂躙するみたいに求めてしまいます。だから、僕の様子がおかしいということには気づいているかも?でも問われたことはないです〉 《私の夫は、私と離婚してその女と暮らしたいと思っているようです。でも、私はこの家庭を壊したくない、子どもたちとの生活を壊したくない。だから知らないフリを続けています。そのうち、夫の熱病にかかったような感情が冷めていくんじゃないかと。だから今は知らないフリをしています。知ってしまったと気づかれないように。息を潜めて平穏なふりを続けています》 〈苦しくはないですか?〉 《苦しいです。心がパリン!と割れてしまいそうな毎日です。“帰りが遅くなる”という知らせがくると……あー、またか、と思ってしまいます》 ___同じだ このナオという女性と僕は、同じような境遇にいる。もっとも僕には子どもはいないけど、愛する人を失いたくないと願いながら毎日を平気なフリで暮らしている……。 〈同じですね。愛する人を失いたくなくて、何も言えずにいて、ひたすらこの悪い状況が終わることを祈っているという〉 《こんなことを言っていいのかわかりませんが。私は今、とてもホッとしています。ここで呟いていても、“さっさと別れろ”“慰謝料だけ取ればいい”とか、そんな回答ばかりでした。だから、アキラさんのように“わかります”と言ってくれる人がいるだけで、ホッとしています》 それからしばらく、やり取りをした。お互いの愛する人が、別の愛する人と過ごしていると思われる時間は特に、砕け散りそうな心を守るために色々話し合った。お互いの気持ちに寄り添えあえる同士のように。 そして気づいたことがある。 ___もしかしてこれも、浮気になるのか? ナオとやり取りをするうちに、なんとも言えない気持ちになっていた。好きとは少し違うけど、意識し始めていた。 ___そうだ!偽装デートしてみては? 浮気の復讐のためにこっちも浮気をする、なんて書いてる人がいたことを思い出した。この苦しい気持ちを少しでも紛らわせるために、決して会わずに浮気の気分だけを味わって、ストレスを発散できないだろうか?会ってしまったら、それは浮気になってしまう。ナオにそのことを持ちかけた。はじめは躊躇していたナオも、僕の提案に面白いかも?と同意してくれた。 そして僕は、ナオと架空のデートをすることにした。
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