真澄の変化

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真澄の変化

それからの僕は、ナオとの架空のデートのことをあれこれ考えるようになった。映画がいいかドライブか?けれどそれではうまく会話ができない。会話はLINEのやり取りですることに決めていたからだ。あれがいいとかこれがいいとか、ナオとそんなやり取りを続けるのも楽しくなってきた。 「ねぇ、聞いてる?」 そんな時、不意に真澄に話しかけられてビクッとスマホを持つ手が震えてしまった。 「え、あ、なんの話だった?」 「もうっ、やっぱり聞いてなかったのね。来月の……おぼえてる?」 ___来月? 僕は壁のカレンダーを見た。 ___あ、そうか 3回目の結婚記念日だった。ナオとの架空デートのことばかり考えていたから、すっかり忘れていた。 「今年はどこに行く?私、欲しいものがあるんだけど……」 結婚記念日は美味しい食事をして、真澄にプレゼントをするのが毎年のならわしみたいになっていた。 「ん……」 僕は少し考える。をしていながら、平気で結婚記念日の予定を入れようとする真澄の感覚がわからない。そして、真澄が喜ぶ顔が見たいからと毎年頑張ってきた結婚記念日のイベントが、なんだかとても負担に思えた。 「あー、ごめん、その日、どうしても取材しなければならないところがあるから、約束できないや」 初めてだった。初めて真澄の期待を裏切った答えをした。あの男との逢瀬を繰り返しているくせに、結婚記念日を祝いたいという真澄の気持ちが腹立たしかった。 「えー、そうなの?そっか、仕事じゃ仕方ないか。じゃあ、ご飯は何か作っておこうか?」 「いや、僕のことは気にしないでいいよ。適当に食べてくるつもりだから。真澄も、友達とでも食べてきたら?」 「え?」 僕の答えが、予想外だったのだろう。これまでは、何がなんでも結婚記念日は一緒に過ごしてきたのに、唐突にバラバラで過ごすことをこの僕が提案したのだから。 「……うん、そうだね。わかった、誰か誘ってみる」 「ごめんね、そうしてくれる?」 そんな会話をしながら、手元のスマホでナオとのやり取りを続けていた。架空デートの予定を、その結婚記念日にした。もちろん、ナオはそんなことは知るよしもないのだけど。 「あの…さ……」 まだ何か言いたげな真澄を見ることもなく、スマホを操作し続ける僕。ナオとどこの遊園地にしようかとやり取りをしていた。
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