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真澄の性格
ある夜、ふと気配がして目が覚めた。暗闇の中に、ぼんやり浮かび上がる真澄の顔があった。
「……なに?」
「えっ、あっ!」
僕の声に驚いた真澄は、充電器に繋がれていた僕のスマホを手から落とした。慌てた真澄の様子を見て、ピン!ときた。
「僕のスマホ、見ようとしてたの?」
「えっ、と…」
「勝手に?」
「ごめんなさい!だって最近のあなた、ずっとおかしいんだもの、何か私に隠してるよね?」
「別に隠してることなんてないよ」
「だって、まえはスマホにロックなんてかけてなかったじゃない?なのに……」
床に落ちたスマホを拾う僕を、疑いに満ちた目で見つめる真澄。
「最近取材してるところは、そういうコンプライアンスが徹底しててね。取材内容も決して明かさないことを約束にやり取りしてるとこが多いから。万が一落とした時のためにロックをするようにしてる」
「ホントに?だったら、見せてよ、そのスマホ。何もないなら見せて」
「何もって?」
「たとえばその、浮気とか?」
「わかった、はい」
僕はロックを解除して、スマホを真澄の前にだす。それを受け取ろうと手を伸ばした真澄の目の前で、パッとスマホを引っ込めた。
「真澄も出して、スマホ」
「えっ!」
「僕は真澄に全部見せられるよ、だから真澄のも見せてよ」
「わ、私、?」
「僕のを見るなら真澄のも見せてくれないと、フェアじゃないと思うけどな」
真澄は、自分の枕元にあるスマホを見つめている。何か思い詰めたように、唇を噛んでじっとしていた。
「どうしたの?」
「えっと、あの、友達の相談に乗ってることとかあるから、見せられない。その子のプライベートなことが書いてあるし」
「そっか。じゃあ僕のだけ見せるっておかしいよね。僕だって仕事上見せられないこともあるんだし」
「うん、ごめんね、なんか私、おかしいよね?近頃の彰君、なんだか変わった気がして、それで不安になって……。ごめんなさい」
「僕が?変わった?」
「なんだかその…うまく言えないけれど、カッコ良くなったから。だから、他の女が手を出してるんじゃないかって、心配になっちゃった。それに私の知らない彰君がいる気がして…」
___あぁ、そういうことか
合点がいった気がした、真澄という女の性格が。隣の芝生は青く見えてしまう、というか他人のモノは格上げされてよく見えてしまって、そっちの方が欲しくなる性格なのだ。だから浮気相手も他人の夫なのかもしれない。
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