真澄の性格

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それからナオとの約束の日まで、特に何事もなく過ぎていった。いや、正確に言えば、僕は身だしなみをととのえたり、新しい服を買ったりと準備をしていた。 それが真澄にはとても気になるようで、時々何か言いたそうにしていたけど、僕はあえて気にしないようにしていた。 「あのさ…やっぱり、明日はダメなの?」 結婚記念日の前の晩。 「うん、ごめん、やっとアポが取れたからこれを反故にするわけにはいかないんだ」 「そっか……」 明日の結婚記念日は、ナオとの約束の日だ。何がなんでもその日に架空のデートをすると決めていた。これは真澄に対する、ある意味での復讐かもしれない。 「真澄は?友達と出かけたりしないの?」 「あ、うん。なかなかみんなつかまらなくて。だから、どこにも行かないと思う」 ___僕が仕事で遅くなるとわかっているのだから、てっきりアイツと会うのかと思ってたけど 「そうか。ごめんね、そのうち何かで埋め合わせするから」 僕は立ち上がって、真澄の頭を撫でた。まるで幼い子供に言い聞かせるように、優しく。 「うん、大丈夫。彰君はお仕事頑張って!」 「あぁ、いい記事を書くよ」 ◇◇◇◇◇ 次の日。 ナオと約束の日だ。待ち合わせは10時、遊園地のチケット売り場だ。もちろん探しあったりはしないけど、もしかしたらどこかですれ違ったり、何かの拍子にお互いの存在に気づいたりするかもしれないと思ったら、オシャレにも気をつかう。 髪をきちんと分けて軽く固めて、黒縁のかっちりした伊達メガネをかける。紺と白のストライプのシャツに麻のジャケットを羽織る。玄関の姿見で確認して、おろしたての靴を履く。 「もう行くの?」 「うん。遅くなるかもしれないから、先に休んでてね」 じゃあとドアを開けようとしたら、真澄に腕を掴まれた。 「え?なに?」 「あ、えっと。アレ、ほら、取材用のパソコンやカメラは?いつものバッグを忘れてるから」 デートなんだから、そんなモノは必要ないんだけど。 「今日は、そんなモノは必要ないんだ。行ってくるよ」 「……行ってらっしゃい」 真澄から見たら、今日の僕は怪しさ満点だろう。真澄が僕の行動を気にするようになったから、僕はわざとスマホを身につけてやたらにいじっていた。もちろんそれはナオとのやり取りのこともあったけど、それ以外にネットサーフィンだけをしていることもあった。 そして僕は今日のために髪型をととのえ新しい服を買い、普段はかけない伊達メガネをかけ、ご丁寧に香水とやらも身にまとってみた。 ずっと真澄のことばかりを気にしていた頃とは違い、どちらかといえば真澄の行動など、何の気にもしていないと真澄には見えていただろう。言葉にこそしなかったけれど、僕が浮気をしていると思っているに違いない。だからこそ、僕のことが気になっているのだろう。
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