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僕の愛し方
これが、僕が真澄に対してとった復讐だ。これまで僕は、真澄のことばかりを見ていたけれど、時々目を離して別の誰かを見ているフリをする。それだけで真澄は、僕から目が離せなくなるはずだ。
僕という男を完全に自分のものだと思い込んでいた真澄は、油断して他の男に目が行った。そしてそれは、これからも続くかもしれない。
その度に僕は、浮気をしているフリをする。
万が一、探偵などに調査されても何も出るはずはない。
こんなことは、歪んでいると思う。
けれど真っ直ぐに愛するだけでは、真澄の気持ちは離れていくのだ。真澄という女は、退屈が嫌いでとにかく刺激が欲しいのだろう。ならばその刺激を僕なりに与えて、真澄の気をひこうと決めた。
◇◇◇◇◇
「観覧車から見る花火は、いつもと違ってなかなかよかったよ」
「私もそれ見たい!連れて行ってよ」
「じゃあ、次の休みに行く?取材の成果を見せてあげるよ」
「うん」
そんなふうに仲良くしている時でも、僕はスマホを手放さない。SNSで、ナオのような女性を探しては、相談にのってやり取りをしている。
もちろん、真澄の前では他の女…浮気相手とやり取りしているような顔をしながら。
「また仕事のやり取り?」
その都度、真澄が疑いの目を向ける。
「うん、まぁね」
僕は平然と答える、でもわずかに、怪しさを含ませて。
そういえば最近の真澄は、おとなしくしているような気がする。あの男とは別れたのだろうか?
それに、嫉妬心から真澄を激しく抱くことはなくなった。
___あれ?少しくらいは他の男の気配があった方が燃えるのかも?
僕の感情は、さらに歪んでしまったようだ。
真澄も僕も、嫉妬を感じることでしか愛情を感じることができなくなってしまったのかもしれない。
___似たモノ夫婦ってことだな
僕と真澄は、きっとこのまま嫉妬を媚薬代わりに夫婦の絆を紡いでいくのだろう。
それもまぁいいかと思った。
「ねぇ、本当に1人で来たの?この遊園地に」
「……調べてみる?」
ーーー完ーーー
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