きっかけ

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「課長、ここに混ぜてもらっていいですか?僕らも桃子ちゃんと話したいんで」 どうやらこの二人は、桃子に気があるようだ。若い人同士なら、話題も弾むだろう。 「あー、もちろん、こっちに詰めるからちょっと待ってて」 僕はみんなが座れるように、席を詰めて一番奥に座った。その横に桃子、それから(やなぎ)、向かい側に丸山(まるやま)。 「ちょっと、私もここのテーブルに混ぜてくださいよ。課長は私の先輩の旦那さんだから、色々話をしたくて」 そう言ってもう一人入ってきたのは、野崎(のざき)百合(ゆり)。妻の愛美(めぐみ)の後輩で、“百合ちゃん”と呼んでいて今でもたまに連絡を取り合っているらしい。去年の夏休みには、我が家でバーベキューをした時にも参加していた。百合(ゆり)はグラスと小皿を持って、僕の向かい側に座った。こうして6人がけのテーブルに5人が座った。 「野崎さん、またうちにも遊びに来てやって。愛美も待ってるから」 「はい、ぜひぜひ。絵麻(えま)ちゃんと莉子(りこ)ちゃんも大きくなりましたよね?」 「莉子(りこ)はもう中1だよ。最近反抗期なのか、あまり話もしてくれなくて寂しいもんだよ」 「大丈夫ですよ、課長と先輩はとても仲良し夫婦ですから、お子さんはまっすぐ育ちますって」 百合(ゆり)はケラケラと笑い、ビールを飲む。その間は、桃子は先程仲間に入ってきた柳や丸山たちと、SNSの話題で盛り上がっている。何かの写真か動画を見ているようだ。 「若いっていいな。なんでも楽しそうに見える」 思わず、実感を込めて言ってしまう。 「そんな、課長はまだまだ若いですよ。二人の子のお父さんには見えません」 百合(ゆり)のお世辞はうれしいけれど、今の若い子の話にはもうついていけない。 「あ、そうだ、これ、課長も入りませんか?」 桃子から見せられたスマホ画面は、動画専用のようだった。 「ん?いや、それは僕には無理だよ。扱い方がさっぱりわからない」 「え?そうですか?簡単ですよ。じゃあグループLINEにしましょうよ」 桃子がスマホを開いて、登録画面を出した。 「お?いいね、桃子ちゃん!僕らともLINE交換してくれるんだよね?」 うれしそうにしたのは、二人の男性たち。 「もちろんいいですよ、お仕事の用事もパソコンメールよりこっちが早いから、便利ですよね?」 「だよね?だよね?」  柳も丸山もさっさとスマホを出した。 「ほら、課長もスマホを出してください。野崎先輩もですよ」 「はいはい、わかりました」 桃子に言われて、5人全員でLINE交換をしてグループを作った。ほんとに軽い気持ちで、LINE交換をした。
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