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個人的に
2時間ほどがたち、そろそろお開きにしようというころ。二つのグループがそれぞれ二次会に行くことになった。
「課長、どちらに加わりますか?カラオケチームと、スナックチーム」
「うーん、そろそろおじさんは退席しようかと思うんだけどな」
「そんな、せっかくですから行きましょうよ、二次会!あ、お代は割り勘なので気にしないでくださいね」
どうしようかなと考えていた時、愛美からのLINEが届いた。
ぴこん♪
《帰りは何時になる?私、バイトの子が一人来れなくなったから、あと、3時間遅くなるんだけど》
妻の愛美は、最近になってコンビニのアルバイトを始めた。長女が中学生になったのを機に、夕方から夜のシフトにも入っている。
___でも、今から3時間だと真夜中になってしまうな
時間を確かめて、二次会は諦めて帰ることにした。
〈今から帰る〉
送信。
「ごめん、やっぱり、おじさんは帰ることにするよ。妻の帰りが夜中になるみたいだから、子どもたちが心配だし。じゃ、ここで失礼するよ。また明日からも頼むね」
えー、残念!という声を背に、駅へと向かって歩き出した。歩いて五分ほどにある私鉄駅の階段を降りて改札を抜けようとした時、ポケットのスマホが鳴動しているのがわかった。
「誰だろう?」
公衆電話と表示された発信者に、訝しく思いながらも改札手前の階段の横で通話する。
「もしもし?」
『小沢課長ですか?』
「はい、そうですが……」
『すみません、斉藤です。あの、課長のカバンに私のスマホ、入ってませんか?』
「え?ちょっと待ってて」
一旦自分のスマホをポケットに入れて、カバンの中を探るとそれらしき物に指が触れた。取り出したらピンク色のケースに入ったスマホだった。
「あ、これかな?入ってたよ」
『よかったぁ!!私、さっきLINE交換した時うっかりそこに入れちゃったみたいで、探してたんです。今すぐ取りにいくので、待っててもらえませんか?上社駅ですよね?もう電車、乗っちゃいました?』
「あ、いや、次は15分後だから大丈夫」
『待っててください、すぐ行きます!』
そこでプツンと切れた。なにを間違って僕のカバンなんかに入れてしまったんだろうか。お酒に酔っていたのか?
仕方がないので改札を通らず、そのままそこで待つことにした。
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