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桃子登場
「今更もう、そんなこと関係ないわ。私はこんな写真知らないし。知ってたら、こんなことする前に高額な慰謝料請求してたわ」
「ふん!もう遅いけどな」
「ホント、残念。不倫してるって知ってたらもっと離婚の仕方も変わったかもしれないのにね。うまく隠し通したわよね」
「………」
黙り込んだ和樹を無視して続ける。
「そうだ、もしかすると私の友達かも?あなたと連絡がつかないと私が相談したから、探してくれてたし。おかげで、あなたから連絡が来て助かったわ」
「はぁ?そっちがあんなにしつこくしてくるからだろ?」
「私はやり直したかった、あなたは仕事で疲れているだけだと思ってたから。だから私にちゃんと向き合って欲しかったのに、全て拒否したのはあなたでしょ?面倒だったんでしょ?私のことが」
「………」
「あなたに全てを拒否された私は、あの後、諦めて離婚届を出した。そのことも連絡したかったのに、連絡できなかったじゃないの!」
「もっと他にもやり方はあっただろ!おかげで桃子はな、あることないこと会社でも言いふらされて、周りから酷い目に遭ってるんだぞ。これ以上続いたら名誉毀損とかで訴えるからな」
「ふーん、桃子っていうの?その人。あることないことって、あったんでしょ?さっきそう言ったのはあなたじゃないの。じゃあ嘘じゃなかったってことよね?さっきのSNSは。それが名誉毀損になるなんて、驚きだわ」
パタンと音がして、入り口に若い女性が立っていた。
___来た!
「はじめまして、奥さん。あ、もう奥さんじゃなかったんでしたね」
キツい視線で私を見たその女を、私はまるで視界にいないように無視をして和樹に話を続ける。
「そのSNSが嘘じゃないなら、友達のことも責められないなぁ、私。だってあなたに連絡がつかない私を助けてくれたんだし、写真は加工してあるんだし。そっちが勝手に自分たちの写真だって騒いでるけど、証拠は?」
「お前がやらせたんだろ?そうに決まってる」
「この写真のせいで私、酷いこと言われてるんだから!どうしてくれるのよ!」
___この二人はバカなのか?
自分達がしたことは棚にあげて、この写真のことばかりを責めている。
「ふぅーっ!」
私は思い切り息を吐く。言いたいことを一気に言うために。そして桃子の存在は無視したまま、和樹を正面から見据える。
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