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「百歩譲って、私がその写真を撮ったとしたら、離婚届を出す前に真実を問いただしてるわよ。その方が相手の女性からも慰謝料が取りやすいし。でも、あなたは一言も私には不倫相手がいることは言わなかった、うまく隠してた、見事に騙されたんだから、私は。なのにどうやってそんな写真が撮れるの?撮れたとしたらどうして私は黙ってたの?」
「それは……」
「それに、この写真がフェイクじゃないことはあなた自身が今、認めたんだよ。顔がわからないように加工してあるのに。誰かに訊かれても、知らないって言い張ればよかったんじゃない?どうしてわざわざ私にこの写真を見せて、実は不倫してましたって言うの?」
「………」
和樹は黙り込んでしまった。そこに桃子が口を出す。
「とにかく、アンタのせいで私は会社で悪く言われてるの、女として魅力がなくなった奥さんにも不倫の責任はあるでしょ?」
どうだ!と言わんばかりの、上からの物言いにイラッとするけど、できるだけ態度を変えずに一切、桃子を無視し続ける。
「私から話したかったことがもう一つあるって言ったわよね?」
「…なんのことだ?」
「ちょっと!無視するつもり?私にご主人を取られて悔しくて乗り込んできたんでしょ?なんとか言いなさいよ!」
桃子は私と和樹の会話に割り込み、和樹の隣に座った。和樹の腕を取って、仲良しを見せつけようとしているのだろう。が、それも無視をする。
まるでそこにいないかのように。
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