0…私が言いたかったこと

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0…私が言いたかったこと

「少し前に、電話があったのよ、ここで片付けをしてる時」 「なんの話だ?」 「だから、どうして私を無視するの?ねぇ!和くん、なんとか言ってよ!」 桃子はだいぶ苛立ってきている。声がキーキーしてきた。 ___そろそろ言うか 私はどうしても桃子に言いたかったことを口にする。 「ちょっと、さっきからうるさいわね。あなた、なんなの?私とこの人が話しているのにごちゃごちゃと」 「なんなのって、私は和くん…あなたのご主人を奪った女よ、どう?悔しいでしょ?自分の夫が若い女に取られた気分は、最悪でしょ?」 「何を言いたいかと思えば…。さっきからこの人にも何回も言ってるでしょ?私とこの人との離婚に、あなたの存在なんてこれっぽっちも関係ないの。あなたがいてもいなくても離婚してたわよ。この人があなたと不倫してたって、さっき知ったんだから。わかる?あなたに取られたんじゃないの、その前に私はこの人を捨ててたの!捨てられてたものを拾っただけよ、あなたは」 「……は?」  「何か勘違いしてるみたいだけど、あなたの存在なんてね、私とこの人の離婚に関してはまったくの無関係、0なの。私の人生に髪の毛一本ほどの影響もないの。だから悔しいもなにもないわよ、さっきからギャーギャーうるさいだけ。私は今、この人と話してるんだからちょっと黙ってなさい」 「……え…無関係?…」 「ね、和樹さん、この人、黙らせなさいよ、あなたが家にいれたんでしょ?それとも、この女性からも慰謝料取りましょうか?離婚してから知った不貞行為でも慰謝料が取れるのよ、知らなかった?」 そこまで言ったら、桃子は黙った。私から和樹を奪ったことを鼻高々に宣言したかったんだろうけど、その鼻をへし折ってやった。心の中で小さくガッツポーズをする。 ___若いだけのプライドが高い女は、その存在を無視されると悔しいだろうな 私が桃子に言いたかったのは、“私が捨てたものを勝手に拾っただけよ”ということだ。 私は、桃子には何も奪われてはいないのだ。
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