病院へ

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足取りは重かったが、検査結果を確認しないとこれからのことが何も決められないと思い、意を決して病院へ来た。本当ならば、桃子が家族として付き添ってきてくれるはずだったのに。 「小沢さん、どうですか?具合は。薬はちゃんと飲みましたか?」 初老の担当医師はにこやかに、言う。 「いや、あの……あの薬って、飲んで効果があるんですか?」 「効果がなかったのですか?まだ胃は痛みますか?」 「まぁ、ストレスが重なって胃の痛みは良くなってないです。というか、痛みを抑えるだけの薬なんですか?もう手遅れだということですか?」 「は?手遅れ、ですか?」 「はっきりおっしゃってください、僕の症状は……?」 医師はカルテを始めから読み返している。 「申し訳ありませんでした、検査結果をきちんとお伝えしてなかったようですね。なかなか来院されなかったので」 「え、えぇ、忙しくて来れなかったんです」 「ストレス性の胃炎ですよ。なのでお薬を飲んで、ストレスのもとを解消することができれば治ると思われますが」 「胃炎?ストレス性の?」 でも薬が…と言いかけてやめる。 「効果がなかったのなら、お薬を変えてみましょうか?」 「あ…はい、お願いします」 薬局で薬をもらい、効能書きを確認する。どう見ても胃炎の薬だった。急いで家に帰り、前回処方された薬をもう一度確認する。今回の薬とは違うけれど、改めて検索してみた。 ___胃炎の薬だ 「やったぁ!!僕はまだ生きられるぞ!」 思わず大声で叫んでしまう。もしかしたらもう余命宣告があるんじゃないかとハラハラしていたから、そうじゃないとわかったことがまるで宝くじにでも当たったようにうれしい。 僕は早速、桃子に連絡を取ることにした。僕は大丈夫だから、結婚しようと。 ……が、全て連絡が取れなくなっていた。 ___病気で金もない男は、いらないってことか あんなに愛し合ってると信じていた桃子は、簡単に僕を捨てて出て行った。僕のことを欲しいと言っていたのに、いらないと。あの激しい夜も、愛の言葉も、愛美に向けた嫉妬心も、全てまやかしだったのか。 桃子という女の性格に今頃気づいても、もう遅すぎる。桃子のことをそういう女だと見抜けなかった僕は、そんな女のために家族を捨ててしまった……。 ___なんて、浅はかな男なんだろう 肉欲に溺れた、ただの中年男だったのだ。若い女をこの手にできるほどのいい男だと勘違いしていただけだ。
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