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◇◇◇◇◇
ここからは、愛美がSNSで知り合い、遊園地で架空のデートをしたアキラという男性の視点です。
___架空のデートか……
そんなこともあったなぁと思い返した。カレンダーを見ると、あれから三つめの季節が過ぎようとしていた。
たまたまSNSで知り合った、顔も素性も知らないナオという女性。それぞれが、それぞれのパートナーの不倫で悩んでいるという共通項でつながった。ナオは夫を、僕は妻を不倫相手には奪われたくないと話していた。
でも、見て見ぬフリを続けるのはとても苦しくて、精神的に壊れてしまいそうになるから、何かでストレスを解消しようともちかけたのがあの架空のデートだった。
LINEのメッセージで会話をしながら、まるでそこにいるかのように振る舞った。周りから見たら少しおかしな男と女がいるだろうと思われたことだろうけど、そんなことは関係なかった。自分たちにとって、そのふざけたやり方のデートで擬似不倫の気持ちになって、人知れず復讐できればよかったから。
顔も本名も明かさず、あの場所で待ち合わせて一緒に楽しんだ、ただそれだけの女性だった。
___ふ〜ん、そうか、離婚したのか
“やっぱりな”という感覚もあるし、少々羨ましいような気持ちもある。
これまでと全く違う新しい生活を、自分で切り開いていくというナオの決意表明のような連絡メッセージが、眩しく見えた。
「彰君、そろそろ時間だよ」
「あー、わかった。出かける準備はできてるから」
妻の真澄に急かされて、ソファから立ち上がる。今日はこれから、真澄とあの遊園地へ出かける。二人ともとびきりのオシャレをして。
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