友達?

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友達?

「私、今日、帰りが遅くなると思う。バイトの子が一人辞めちゃったから」 「わかった。今日は僕が晩御飯を用意しておくから」 「んー、晩御飯か。お店の子と食べてくると思うから、私の分は用意しなくてもいいよ」 「そう?じゃあ、テキトーに済ませとくよ」 「うん、ごめんね」 「いや、友達との時間も大切だからね」 僕と真澄の間には子どもはいなかった。当分は二人きりの生活がしたいと真澄に言われて、僕もそれに賛成した。これで真澄との暮らしを存分に味わえると思っていたのは最初の頃だけで、だんだんとすれ違いが多くなっていった。それでも。 ___僕は真澄の夫なのだ 薬指にはめたお揃いの結婚指輪が、ふと寂しくなってしまう気持ちを宥めてくれた。 ◇◇◇◇◇ そんなある日。 僕は、雑誌のグルメ記事の取材であるホテルに来ていた。ディナーコースが一新されて、女性ウケがいいレストランは、予約席でほとんどが埋まっていた。仕事でもなければ、こんなところへ来ることは、滅多にないだろうと思う。 案内されたテーブルに一人で座り、メニューを開いたら、たくさんの人の会話に混じって聞き覚えのある声が聞こえてきた。 ___え?真澄? 思わず周りを見渡す。 「いた!」 見つけたと同時に、僕はメニューで顔を隠してしまった。真澄の声がしたのは、男女4人ずつのグループのテーブルからだった。 ___友達って、このグループのこと? 僕はてっきり、仲のいい女友達だとばかり思っていたから、面食らう。声をかけたりしてはいけない気がして、そっちを向かないように、ひたすら料理のレポートを書くことに専念していた。 それでも、やはり気になるわけで……。 どういう(たぐい)の人間が集まっているのかわからないが、どう見てもコンパに見える。どんな会話をしているのか見えないが、ひとしきり食事と会話で盛り上がっていた。 僕はスマホを真澄の方に向け、真澄の手元を写真に撮る。ズームで確認すると、その手にはちゃんと結婚指輪がある。 ___浮気というわけではないよな ただの仲良しの集まりかなにかだろう、くらいにしか考えなかった。
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