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あのボロッボロのアパート。
イチのお父さんがそのアパートを取り壊し、そこに二世帯住宅を建ててくれた。
そして、そこにイチと私・・・あの後すぐに入籍をしたお母さんとお父さんが、住んでいる。
「幸子ちゃん、名前は決めてるの?」
「それは気が早すぎ。」
「そう?僕はお母さんと付き合ってる時から、まだ妊娠もしてないのに、“女の子だったら幸子にしよう”って言ってたよ。」
お父さんがネクタイを締めながら、そんなことを今更言ってきて・・・
「幸子って名前、お父さんが付けたの!?」
お父さんの献身的なリハビリもあり、普通に歩けるようになっているお母さんにも聞く。
「そうだよ?
お母さんは今風の名前が良かったけど。
お父さんが付き合ってる時から“幸子。幸満つる子で、幸子”って、ずっと言ってたから。」
それで、納得をした。
お母さんは、私によく言っていたから。
“幸子。幸満つる子で、幸子”と・・・。
それを言う度、お母さんは幸せそうな顔で私を見ていたから・・・。
「お母さんは、幸せだった。
大好きなお父さんの赤ちゃんを妊娠出来て。
そして出産して、サチがすくすくと育って。
お母さんはずっと、幸せだった。」
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