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《第2章》詠と銀次の能力
研究所から離れて日も落ち、外は雨が降っていた。銀次が借りていたマンションの一室に2人はいた。詠みはベットに横たわって眠っている。その傍らには銀次がいて情報収集をしていた。
(やはりか・・・)
銀次が端末を見ながらつぶやく。
「ん・・・」
詠がぼんやりと目を覚ます。
銀次が詠に
「お目覚めかな?詠?」
と声をかける。すると詠が照れながら、
「うん」
と答えた。続けて
「えっと、ここは?」
と尋ねる。
「ここは俺の自宅だよ。今日から一緒に住もう!詠!」
予想外のことを言われたので、詠の顔と耳は真っ赤になった。
「耳まで真っ赤だね。」
と、銀次がからかうので詠みの顔と耳はさらに真っ赤になった。それをみた銀次は
「ごめん。怒った?」
「いいよ。怒ってない。それよりも何かわかった?」
(・・・眠っていたのに情報を集めていたのを知っていたのか?)
銀次が疑問に思うと、詠はこう続けた
「言之葉家の当主は代々透視能力を持っているの。それによって人の感情と思考が視えるの。だから、銀次君のこともよくわかるの。私には銀次君のセカイが視える。」
(これが言之葉家の能力・・・)
「単刀直入に言う。言之葉家を潰そうとしている人物がいる。」
「私狙われてるんだ・・・。」
不安そうな顔をしている詠に、銀次は彼女の鼻を軽くつついた。そのあと、こう続けた。「言之葉家を潰そうとしている奴は確実にいる。しかも、その人物は案外近くにいるんじゃないかと俺は思っている。」
すると、詠は少し考えてこう言った。
「もしかして、私の伯母かもしれない、昔から母と私のことをよく思ってないみたいだから・・・。」
「詠のお母さんの能力は優れていたからね。」
(!!!)
銀次の発言に詠は驚きを隠せない。なぜなら、詠の母は出産後間もなく死亡していて、銀次はもとより、詠もあったことがないからだ。
「なんで、お母さんのこと知ってるの?」
「俺には、ヒトの過去の記憶が視えるんだ。」
(これが銀次君の能力・・・)
「私自身が知らない記憶まで視えるなんてすごいね。」
という詠の言葉になぜか銀次の表情は曇った。
「銀次君ごめん。なんかいけないこと言った?」
詠が慌てて言うと、銀次はこう言った。
「詠は何も悪くない。ただ、過去に散々小茂木家に利用されたからそれを思い出しただけだよ。それに、今の俺には詠がいるから大丈夫だよ。」
(詠は俺以上に苦労しているんだから。俺が過去にとらわれている場合じゃないな・・・
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