《第4章》過去との決別

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《第4章》過去との決別

とある町外れの廃工場。 女が煙草をふかしている。その人物は、ヒールをコツコツと鳴らしながら、工場の奥へ進み扉の前で止まった。 その人物は不敵に笑みを浮かべながら 「フフフ、私だって言之葉の人間ですもの。呪術くらいはできるわ。後は・・・」 銀次と詠が廃工場にたどり着いた時には、真夜中になっていた。というのも、結界が強固でなかなか突破できなかったためだった。 二人が工場に足を踏み入れる。すると、次の瞬間、強烈なめまいと頭痛に襲われた。 (何が起きたんだ!?立っていられない) (この術って、まさか・・・) 「ようこそいらっしゃいました。」 そう言いながら、奥から一人の人物が歩いてきた。 「誰だ!」 銀次がすかさず詠の前に行き盾になる。 「伯母さん・・・」 詠がつぶやいた。 (あの人が詠の伯母さん?でも何だ?この違和感は・・・) 「伯母さん、言之葉で適正がある者だけが使用できる禁術を使いましたね?」 「さすがは詠ちゃん!お見事!」 「ふざけてる場合じゃないです。この術は適正に使わないと身を滅ばす術。たとえ、言之葉の当主であっても適正がない場合は使用禁止です。」 「適正って、覚悟のことでしょ?それなら私にだってあるわ」 「本当の覚悟とは揺らぎない信念のことです。それなのにあなたは自分の欲のために言之葉家が許可していない禁術を使った。言之葉家当主として絶対に許しません!」 「許しません?じゃあどうするの?」 「あなたを止めるまでです。」 そう言うと詠は銀次の目を見つめて、こう言った。 「銀次君、一緒に戦ってくれる?」 「もちろん。」 「ありがとう。一つ聞きたかったんだけど、なんで禊を受けたの?」 「詠のセカイを守りたかったからだよ。」 「!!!」 「私も銀次君とのセカイを守りたい!」 その会話の終わりと同時に、詠の術式が展開される。そして、それにシンクロするかのように銀次の術式も展開された。 詠はその身に十二単を纏い、頭上には冠が浮かび、瞳の色は鈍色(にびいろ)に変化していた。一方、銀次は浄衣を纏い銃を構えている。 銀次が詠の伯母に向かって術で精製した氷の弾丸を放つ。伯母も銃を使って応戦する。 「甘いわね。」 その言葉と同時に、禁術の術式が展開される。 「詠!危ない!!」 「大丈夫。信じて待ってて。」 「あの娘、まさか!」 「裁きの時・・・。」 詠がそう告げると、言之葉家の家紋が浮かびあがる。 すると、閃光と共に術式と詠の伯母が消えた。 文字通り”浄化“されたのだ。 全てが終わると、詠と銀次は元に戻った。 「ごめん。一緒に戦うって、言ってくれたのに。」 詠が申し訳なさそうに言うと 「ううん。それより身体大丈夫?無理したんじゃない?」 「うん。正直ちょっと疲れちゃった。」 「じゃあ、帰ろうか。俺たちの日常に。」 詠がうなずく。二人は、新しい『セカイ』に 向かって歩きだした。
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