堕罪 ★第181回妄想コンテスト「〇〇が落ちてきた」優秀作品

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 それは私の腕の中に落ちてきた。  受け持ちの団地で、郵便受けにダイレクトメールを配り終わった私は、うっすらと浮かんだ汗を化粧が落ちないように拭き取りながら、西日を避けて棟の裏手を歩いていた。そして上空から落ちてくる黒い物に気が付いた私は、自然と駆け寄り腕を差しのべていた。  その小ささとは裏腹にズシリとした命の手応え。私の腕の中には、天使のような寝顔の赤ん坊がいた。  見上げるとベランダから身を乗り出して、こちらを覗いている女性がいた。その女性の目を見た私は、感情が無く空っぽだと直感した。すると女性は何事もなかったかのように干してあった洗濯物を取り部屋へ戻ると、二度と現れる事がなかった。
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