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私は会社に作業終了の連絡を入れると、体調不良を理由に直帰した。
住み慣れた東京のワンルーム、使い慣れたベッド、そこで眠る赤ん坊。私はそれを眺めながら思考の回復を待った。
落ちてきた命を抱いた私は、しばらくその場に留まった。さっきの女性が来ると思ったからだ。しかし誰かが来ることも、騒ぎが起きることもなかった。団地はただただ日常の音に包まれていた。
女性が覗いていた部屋へ行くのは、この子を悪魔に差し出すも同じと思えた。交番に届けたとて同じことだし、ニュースになってからでもいいだろう。そうして私は、感情のままに行動してしまっていた。いや、会社に連絡も入れたし、液体ミルクや紙オムツまで買って帰ってきた。私は自分の意思で、この子を拐ったのだ。
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