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 私は暴力夫から逃げ出して、黙って大和を生んで育てている事にした。家主は近所のおじさん、おばさんが集うカラオケステージのあるスナックで働けるよう口を利いてくれた。大和も歓迎してくれて、それは量産型祖父母ができたようだった。  一日中大和と一緒に居られるし、隠れて暮らしているとは思えないほど周りの人にも恵まれた。  贅沢をしなければ幸せすぎる日々だったが、大和のこれからの為にも貯金は必要だった。小学校に上がるまでには、戸籍も買ってあげないといけない。  やがて母親が怪しいと憶測をよんだ『 赤ん坊失踪事件』は、ニュースで取り扱われなくなると世間からも忘れ去られた。
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